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ASCO2011:肝細胞がんにはスーテントよりネクサバールが効果的か!?

カテゴリ : 
がん医療総論
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[更新日:2011年6月16日]
 VEGFRキナーゼなどのマルチキナーゼ阻害作用を示すソラフェニブ(商品名ネクサバール)は進行肝細胞がんに有効性があると報告され,世界的に標準治療として評価されています。今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,進行肝細胞がん患者を対象として,ソラフェニブとスニチニブ(商品名スーテント)の効果を比較する台湾のランダム化比較試験(SUN1170試験)結果が報告されています。抄録などの情報に基づいて,その結果を紹介します。


Cheng A. et al. ASCO 2011 # 4000

対象患者:軽度の肝機能障害(Child-Pugh A)が認められる,PS 0-1,全身化学療法の経験のない進行肝細胞がん患者1073例

研究デザイン:ランダム化比較試験

層別因子:地域,TACEの経験の有無,腫瘍血管浸潤程度

治療群:
スニチニブ群(529例):スニチニブ37.5mg/日を経口投与
ソラフェニブ群(544例):ソラフェニブ400mg/回を1日2回経口投与

効果指標:
(主要評価項目)全生存期間(非劣性/優越性)
(副次的評価項目)無増悪生存期間,無増悪期間,有害事象

結果:
1. 患者背景因子
 両群の患者背景因子に大きな偏りは認められない。

2. 試験の状況
 中間解析で,スニチニブ群で重篤な有害事象の頻度が高く,ソラフェニブに比較して効果が期待できないことから,試験は中止した。

3. 有効性
・ 50%全生存期間
 スニチニブ群:8.1ヵ月,ソラフェニブ群:10.0ヵ月
 ハザード比1.31,95%信頼区間1.13-1.52,P=0.0019

 ソラフェニブ群の全生存期間は有意に良好。

・ 50%無増悪生存期間
スニチニブ群:3.6ヵ月,ソラフェニブ群:2.9ヵ月
 ハザード比1.12,95%信頼区間0.98-1.29,P=0.1386

・ 50%無増悪期間
 スニチニブ群:4.1ヵ月,ソラフェニブ群:4.0ヵ月
 ハザード比1.31,95%信頼区間0.97-1.31,P=0.1785

 両群の無増悪生存期間,無増悪期間に有意差は認められない。

4. サブグループ
a. 50%全生存期間
・ HBV感染例
 スニチニブ群(290例):7.8ヵ月,ソラフェニブ群(288例):7.9ヵ月
 ハザード比1.09,95%信頼区間0.90-1.32,P=0.236

・ HCV感染例
 スニチニブ群:9.2ヵ月,ソラフェニブ群:17.6ヵ月
 ハザード比1.52,95%信頼区間1.09-2.13,P=0.0165

 HBV感染では,両群の全生存期間に有意差はないが,HCV感染例では,ソラフェニブ群の全生存期間が有意に良好。

・ アジア地域
 スニチニブ群:7.2ヵ月,ソラフェニブ群:8.8ヵ月
 ハザード比1.21,95%信頼区間1.03-1.42,P=0.0171
・ アジア以外
 スニチニブ群:9.3ヵ月,ソラフェニブ群:15.1ヵ月
 ハザード比1.64,95%信頼区間1.20-2.26,P=0.0036

 アジア地域でも,アジア以外の地域でも,ソラフェニブ群の全生存期間が有意に良好。

b. 50%無増悪生存期間
・ アジア地域
 スニチニブ群:2.9ヵ月,ソラフェニブ群:2.8ヵ月
 ハザード比1.03,95%信頼区間0.88-1.20,P=0.393
・ アジア以外
 スニチニブ群:4.2ヵ月,ソラフェニブ群:5.6ヵ月
 ハザード比1.46,95%信頼区間1.07-2.00,P=0.0182

 アジア地域では,両群の無増悪生存期間には有意差はないが,アジア以外の地域では,ソラフェニブ群の無増悪生存期間が有意に良好。

5. 主な有害反応(グレード3-4)
・血小板減少 スニチニブ群:30%,ソラフェニブ群:5%
・好中球減少 スニチニブ群:25%,ソラフェニブ群:3%
・手足症候群 スニチニブ群:13%,ソラフェニブ群:21%
・出血 スニチニブ群:12%,ソラフェニブ群:5%
・治療関連死 スニチニブ群:18%,ソラフェニブ群:16%

 血小板減少,好中球減少,出血はスニチニブ群の頻度は高いが,手足症候群は,ソラフェニブ群に頻度が高い。

著者らの結論
 進行肝細胞がんでは,スニチニブの全生存期間がソラフェニブと同等またはそれ以上の改善という主要評価項目の仮説を検証できなかった。しかし,無増悪生存期間や無増悪期間は両群に有意差は認められなかった。スニチニブはソラフェニブに比較して,有害事象の頻度も高い。

<コメント>
 進行肝細胞がんに対して,ソラフェニブが効果的であることがランダム化比較試験(SHARP試験)で確認され,世界的にソラフェニブが承認されています。今回の試験は,スニチニブが,ソラフェニブと同等またはそれ以上の効果を発揮することを期待して,行われたものですが,結果は,スニチニブの全生存期間がソラフェニブと同等またはそれ以上の改善という仮説を検証出来ませんでした。
 副次的評価項目である無増悪生存期間に関しては,両群に有意差はありませんでしたが,サブグループ解析で,アジア以外の地域の例では,ソラフェニブ群が良好であることが示され,全生存期間に関してもHCV感染例では,ソラフェニブ群が良好であることが示されています。
 スニチニブも,ソラフェニブもVEGFRのチロシンキナーゼ阻害作用を示しますが,肝細胞がんは,Raf活性が亢進していると考えられていますので,肝細胞がんには,Rafキナーゼ阻害作用があるソラフェニブがより効果的であると考えられるかもしれません。しかし,腎細胞がんに関しては,スニチニブが効果的であることから,英国NICEでは,腎細胞がんの1次療法として,スニチニブしか推奨していません。
 このことは,がん種によって,増殖に関連する分子の寄与が異なるために,効果的な薬剤も異なると考えられるかもしれません。
 一方,有害事象に関しては,好中球減少や血小板減少などの骨髄抑制や出血の頻度はスニチニブ群に高く,手足症候群はソラフェニブ群に高いことが認められています。しかし,血管新生阻害作用のある薬剤に特徴的な高血圧の頻度に関しては,抄録に記載されていません。
 結論を言いますと,肝細胞がんには,ソラフェニブがより効果的で,スニチニブは有害事象が増加するもののあまり大きな効果が期待できないことになります。

<関連情報>
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