TOP  >  がん総合情報  >  がん医療総論  >  ASCO2011:PARP阻害薬イニパリブはトリプルネガティブ転移性乳がんの予後を改善するか?

がん総合情報

ASCO2011:PARP阻害薬イニパリブはトリプルネガティブ転移性乳がんの予後を改善するか?

カテゴリ : 
がん医療総論
閲覧 (6224)

[更新日:2011年6月13日]
 
エストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,HER-2がともに陰性のいわゆるトリプルネガティブ乳がんに対して,ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬の効果が期待され,第II相試験では,イニパリブが有望な結果を示していました。米国シカゴで行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,トリプルネガティブ転移性乳がんを対象として,カルボプラチンとゲムシタビンの化学療法群とそれらにイニパリブを併用した群の効果を評価するランダム化比較試験結果が報告されていますので,抄録に基づいて紹介します。


O'Shaughnessy J et al. ASCO 2011 #1007

対象患者:
 18歳以上,PS=0-1,測定可能病変を有するトリプルネガティブ転移性乳がん患者519例

研究デザイン:ランダム化比較第III相試験

層別因子:前化学療法(0 vs 1-2)

治療群:
化学療法単独群(258例):ゲムシタビン1000mg/m2とカルボプラチンAUC=2をday1及びday8に静脈内投与。
iniparib併用群(261例):上記化学療法に,イニパニブ5.6mg/kgをday1,day4,day8,day11に静脈内投与。
 両群の治療は3週毎に繰り返し,化学療法単独群で腫瘍増悪が確認されたら,イニパリブ併用群への変更を認めた。

効果指標:
(主要評価項目)全生存期間,無増悪生存期間
(副次的評価項目)奏効率,有害事象

結果:
1. 患者背景因子
 両群の患者背景因子に大きな偏りは認められない。
・化学療法(1次化学療法57%,2-3次化学療法43%)
・化学療法単独群で,腫瘍増悪後にイニパリブ併用群に変更した例:152/258(59%)

2. 有効性
a. 50%全生存期間
 イニパリブ併用群:11.8ヵ月,化学療法単独群:11.0ヵ月
 ハザード比0.876,95%信頼区間0.687-1.116,P=0.284

 両群の全生存期間に有意差は認められなかった。

b. 50%無増悪生存期間
 イニパリブ併用群:5.1ヵ月,化学療法単独群:4.1ヵ月
 ハザード比0.794,95%信頼区間0.646-0.976,P=0.027

 イニパリブ併用群の無増悪生存期間は,化学療法単独群に比較して有意に良好。

3. 主な有害事象(グレード3-4)
・好中球減少 イニパリブ併用群:61%,化学療法単独群53%
・貧血 イニパリブ併用群:18%,化学療法単独群22%
・血小板減少 イニパリブ併用群:28%,化学療法単独群24%

 イニパリブ併用によりやや好中球減少や血小板減少が多い印象があるが,その他には併用により大きな変化がないと記載されている。

著者らの結論
 第II相試験と同様な安全性プロフィールが認められているが,イニパリブ併用により予め定めた二つの主要評価項目であるトリプルネガティブ転移性乳がん患者の全生存期間,無増悪生存期間の改善を認めなかった。これらの所見に関する詳細な解析を今後行う。

<コメント>
 第II相試験でトリプルネガティブ乳がんに有効性を認めていたPARP阻害薬イリパリブですが,第III相試験では,無増悪生存期間はかろうじて,イニパリブ併用群が有意に良好であることが示されたものの,全生存期間では有意差は認められていません。この試験では,全生存期間と無増悪生存期間がともに改善すること科仮定した検証試験ですので,この試験は,主要評価項目を達成できなかったと結論されます。
 この試験でも,化学療法単独群の患者が腫瘍増悪が明らかとなった時点で,イニパリブを併用しても良いとされており,59%の患者がイニパリブを併用しています。腫瘍増悪があるにしても,有効であると確定されていないイニパリブを併用を認めるというのは,全生存期間に対する効果を評価するためには,バイアスが入り込む可能性が高くなりますので,研究デザインとしていかがなものかとも思います。
 第II相試験で良好な結果が得られていましたので,効果予測因子など検討していなかったのかもしれませんが,この結果で,PARP阻害薬が効果がないと判断するのではなく,どのような因子を持つ例に効果があるのかを解析し,その条件に合致する症例で効果を検証することが必要と思われます。
 
<関連情報>
PARP-1阻害薬Iniparib (BSI-201)はトリプルネガティブ転移性乳がん患者の予後を改善しない?
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=351
トリプルネガティブ乳がんに対するPARP-1阻害薬iniparibの第II相試験結果
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=2010
ASCO2009情報:BSI-201がトリプルネガティブ乳がんに有効である可能性が示された
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=318
トリプルネガティブ乳がん患者に有効性の高いと期待されるレジメンが開発されています
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1738
トリプルネガティブ乳がんの術前化学療法の第II相試験から
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1482
初期乳がんの術後化学療法レジメンを評価した2つの報告から;皆さんはどのンレジメンを選びますか?
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=2004
トリプルネガティブリンパ節転移陰性初期乳がんの術後補助療法としてCMF療法は効果的かもしれない
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1919
トリプルネガティブ,HER-2過剰発現乳がんの脳転移のリスクに関する研究
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1773

ログイン

ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失