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2010年米国FDA抗がん剤承認状況から

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 米国FDAのホームページに,2010年にFDAから承認を受けた抗がん剤が紹介されています。このホームページの情報に基づいて,承認された抗がん剤を紹介します。

http://www.fda.gov/AboutFDA/CentersOffices/CDER/ucm093885.htm

・エリブリン(商品名ハラベン,エーザイ)
 これまでに転移性乳がんの治療として,術後補助療法または転移性乳がん治療としてアンスラサイクリン製剤やタキサン製剤を受け,2つ以上の化学療法レジメンを受けた転移性乳がん患者の治療薬として承認(2010年11月15日)
<関連情報>
ASCO2010:新規微小管作用薬エリブリンは,標準治療に奏効しなくなった乳がんに効果がある?!
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=342
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選んだがん医療の進歩(2010年の発表より);Part2
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1989

・エベロリムス(商品名アフィニトール,ノバルティス)
 手術の適応とならず治療を要する結核硬化症に関連する上衣下巨細胞性星細胞腫患者に対する治療薬として,MTOR阻害薬であるエベロリムスを迅速承認(October 29, 2010)。エベロリムスは,スニチニブやソラフェニブに抵抗性を示す進行腎細胞がんに承認されている。
<関連情報>
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選んだがん医療の進歩(2010年の発表より);Part3
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1990
mTOR阻害薬エベロリムスの転移性腎細胞がんに対する第III相試験結果
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1485

・ダサチニブ(商品名スプリセル,BMS) 
 新たに診断された慢性期の成人フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病患者の治療として,経口キナーゼ阻害薬であるダサチニブを迅速承認(2010年10月28日)。
<関連情報>
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選んだがん医療の進歩(2010年の発表より);Part1
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1988

・トラスツズマブ(商品名ハーセプチン,ジェネンテック)
 治療の経験のないHER-2過剰発現が認められる転移性胃がんまたは胃.食道接合部のがん患者の治療として,シスプラチンとフッ化ピリミジン(カペシタビンまたは5-FU)の併用で,トラスツズマブ使用を承認(2010年10月20日)
<関連情報>
HER-2陽性進行胃がんにハーセプチン併用療法は有効か?
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1962

・ゲムツズマブオゾガマイシン(商品名マイロターグ,ファイザー)
 ゲムツズマブオゾガマイシンは,有効性の問題から自主的に販売中止(2010年10月15日)

・ニロチニブ(商品名タシグナ,ノバルティス)
 経口キナーゼ阻害薬であるニロチニブを新たに診断されたフィラデルフィア染色体陽性の成人慢性骨髄性白血病治療薬として迅速承認(2010年7月17日)
<関連情報>
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選んだがん医療の進歩(2010年の発表より);Part1
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1988

・カバジタキセル(商品名Jevtana,サノフィ・アベンティス)
 ドセタキセルを含むレジメンで治療され,転移性ホルモン抵抗性前立腺がん患者の治療薬として,プレドニゾンとの併用で承認(2010年7月10日)
<関連情報>
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選んだがん医療の進歩(2010年の発表より);Part3
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1990

・エルロチニブ(商品名タルセバ,ロシュ)
 プラチナを含む1次化学療法4サイクル後に増悪が認められない局所進行または転移性非小細胞肺がん患者の維持療法薬として承認(2010年4月16日)
<関連情報>
SATURN試験:タルセバの非小細胞肺がんの1次化学療法後維持療法
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1923
ESMO2010:活性EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がんの1次療法としてタルセバが有効!
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=348
ASCO2010:進行非小細胞肺がんの1次療法としてタルセバ,増悪後に化学療法を投与する例の全生存期間は不良
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=339

・リツキシマブ(商品名リツキサン,ジェネンテック)
 フルダラビンとシクロホスファミドとの併用で慢性リンパ性白血病治療薬として承認(2010年2月18日)
<関連情報>
リツキサン,慢性リンパ性白血病でも有効性が証明されたようです
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=237
慢性リンパ性白血病にはベンダムスチンが有効!!
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1783
新薬情報:FDAは,CLL治療薬としてbendamustineを承認
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=135
B細胞のCD20抗体ofatumumabが慢性リンパ性白血病治療薬としてFDAに承認申請
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=286
学会情報:慢性リンパ性白血病にもリツキサンが有効
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=266

・ラパチニブ(商品名タイケルブ)
 HER-2過剰発現が認められる転移性ホルモン受容体陽性閉経後乳がんに対して,レトロゾール(商品名フェマーラ)との併用で迅速承認(2010年1月29日)
<関連情報>
ASCO2009情報:ホルモン受容体陽性乳がんに対するタイケルブとフェマーラの併用効果(EGF30008試験)
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=310
ホルモン受容体陽性閉経後乳がんの1次療法としてフェマーラとタイケルブの併用は有効か?
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=279
HER-2/ホルモン受容体陽性転移性乳がんに対して,フェマーラとタイケルブの併用も有効か?!
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1806
HER-2/ホルモン受容体陽性転移性乳がんに対するハーセプチンとアルミデックスの併用療法
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1804

<コメント>
 2010年に米国FDAが承認した新規薬剤や適応拡大情報をお知らせしました。思ったほど新規約剤の承認は多くないと思います。
 米国FDAは迅速承認制度がありますが,承認後に有効性が証明されなければ,承認を取り消すようになっています。ゲムツズマブオゾガマイシン(商品名マイロターグ)がその典型例と思います。日本では効能が異なるということで,承認されたままですが,適切に評価されているかを吟味することが必要と思います。
 日本では,世界で承認されている標準治療薬が承認されていないというドラッグラグ問題が注目され,ドラッグラグを解消するために,欧米で行われた臨床試験データと日本の使用経験(症例数が少ない)で承認されることもありますし,「未承認薬検討会議」などで推奨された薬剤の公知申請を行うことが行われています。
 薬物の反応性は,人種差があり,欧米で評価されたものが,必ずしも日本人に効果的であるのか不明の部分もありますし,有害反応の出現率も異なる可能性があります。
 このような場合には,全例調査を義務づけて承認していますが,全例調査だけでなく,承認後にランダム化比較試験などで日本人に対する有効性の評価を義務づけることも必要と思います。そして,有効性が証明されなければその時点で承認を取り消すことが重要ではないかと思います。
 このままでは,日本でがんの臨床試験が行われなくなり,日本人にとって適切な薬物療法を行うことが出来なくなる可能性があります。

 HER-2陽性胃がんに対するシスプラチン+フッ化ピリミジン(カペシタビンまたは5-FU)とトラスツズマブの併用効果を評価した国際共同試験ToGA試験で,トラスツズマブ併用群が有意に全生存期間を改善することが認められました。しかし,地域別のサブグループ解析では,欧米人では,有意にトラスツズマブ併用群の全生存期間が改善されることが確認されていますが,日本人を含むアジア人(症例数が最も多い)では,生存期間の改善効果は認められていません。サブグループ解析の結果ですので,アジア人に効果はないとは断言できませんが,少なくてもこのデータを日本人に外挿することは妥当ではないと考えます。
 
 また,1次療法後に増悪が認められない非小細胞肺がん患者の維持療法としてエルロチニブが認可されました。しかし,英国NICEでは,この適応を推奨しないと結論しています。理由は主にコストのようです。
 世界的にがん医療のコストは高騰化しており,日本でも,標準治療でさえも,経済的理由から治療を拒否する患者が多くなっていると報道されています。Value for Moneyが原則で,良い薬は高薬価になることは当然のことと思いますが,患者さんの経済状況や健康保険の経済状況を逼迫させていることは問題になるのかもしれません。
 製薬企業は開発費を捻出するためには高薬価が必要と主張していますが,報道される経営者の年収や退職金,学会などの派手な展示などに支払うお金があるなら,薬価を引き下げてはいかがかと思うこともあります。
 患者中心のがん医療には,製薬企業の関与も必要になると思います。そのためには,自社の利益を考えた臨床試験(治験)だけではなく,本当に患者さんに役立つ臨床試験を行い,適切な投与方法の確立などを行うべきと思います。

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