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ESMO2010:活性EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がんの1次療法としてタルセバが有効!

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がん医療総論
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 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブ(商品名イレッサ)は,活性EGFR遺伝子変異が認められる非小細胞肺がん患者の1次療法として,標準化学療法より優れた無増悪生存期間を示すことが認められていますが,エルロチニブ(商品名タルセバ)に関しては,そのような効果があるかどうか明らかではありませんでした。2010年10月8日-12日にイタリア・ミラノで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で,活性EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がん患者の1次療法として,エルロチニブ単独群とゲムシタビン,カルボプラチン併用の化学療法の効果を比較したランダム化比較試験(OPTIMAL試験)結果と効果予測因子の検討結果が報告されています。抄録や種々の情報に基づいて,この結果を紹介します。


1. ランダム化比較試験(OPTIMAL試験)結果
Zhou C, et al, ESMO 2010  LBA13

対象患者:
 PS=0-2,測定可能病変を有し,化学療法の経験のない活性EGFR抗体遺伝子変異(エクソン19欠失/エクソン21のL858R変異)が認められる進行非小細胞肺がん患者165例(解析例154例)

研究デザイン:ランダム化比較第III相試験

層別因子:組織型,喫煙状況,EGFR遺伝子変異のタイプ

治療群:
エルロチニブ群(82例):エルロチニブ150mg/日を耐えられない毒性出現または腫瘍増悪まで経口投与
化学療法群(72例):ゲムシタビン1000mg/m2をday1及びday8,カルボプラチンAUC=5をday1に静脈内投与。これらを3週毎に4サイクル継続。

効果指標:
(主要評価項目)無増悪生存期間
(副次的評価項目)全生存期間,奏効率,有害事象

結果:
1. 患者背景因子
 性別,組織型,喫煙状況,EGFR遺伝子変異のタイプに関しては,両群に偏りは認められない。

2. 有効性
a. 無増悪生存期間
 エルロチニブ群:13.1ヵ月,化学療法群:4.6ヵ月
 ハザード比0.16,95%信頼区間0.10-0.26,P<0.0001

b. 奏効率
 エルロチニブ群:83%,化学療法群:36%,P<0.0001

c. 病勢制御率(CR + PR + SD)
 エルロチニブ群:96%,化学療法群:82%,P=0.002

 無増悪生存期間,奏効率,病勢制御率ともにエルロチニブ群が有意に良好。

d. 全生存期間
 追跡期間が短く評価できない。

3. 有害事象
 エルロチニブ群が化学療法群に比較して,重篤な有害事象の頻度が少なく,間質性肺炎などの有害事象もこれまで報告されている頻度と変わりはない。

著者らの結論
 活性EGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がん患者では,標準的1次化学療法に比較してエルロチニブ投与による1次療法が有意に無増悪生存期間を延長する。エルロチニブは限られた患者では,1次化学療法より好まれる治療と考えられる。

II. OPTIMAL試験における効果予測因子の検討
Wu Y-L, et al, ESMO 2010  LBA14

対象患者:上記と同じ(省略)

研究デザイン:レトロスペクティブ試験(OPTIMAL試験対象患者を用いた関連性試験)

方法:
 PCR法などを用いてKRAS,EGFR T790M,HER2,BRAF,PIK3CA,PTEN の遺伝子変異およびc-MET増幅状況を測定し,無増悪生存期間との関連性を検討。

結果:
1. EGFR遺伝子変異別の効果
・両群のエクソン19欠失とL858R変異別の無増悪生存期間を比較。
 エルロチニブ群:ハザード比0.58,P=0.057
 化学療法群:ハザード比1.23,P=0.41
・両群をあわせたEGFR遺伝子変異別の50%無増悪生存期間
 エクソン19欠失(52%):15.3ヵ月,L858R変異(48%):12.5ヵ月

2. c-Met増幅の影響
 両群ともc-MET増幅例と非増幅例の無増悪生存期間に有意差は認められない(エルロチニブP=0.34,化学療法P=0.25)。

著者らの結論
 活性EGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がん患者では,エルロチニブと化学療法の効果の差を予測しうるバイオマーカーは特定できなかった。活性EGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がんでは,肺がんで確認される他の遺伝子変異はまれである。治療前のc-MET増幅は,エルロチニブや化学療法の有効性を予測し得なかった。

<コメント>
 活性EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対する1次療法として,ゲフィチニブ投与群が標準化学療法群に比較して有意に無増悪生存期間が良好であることは,IPASS試験のサブグループ解析やNEJ002試験,WJTOG3405試験などのプロスペクティブランダム化比較試験で確認されていました。
 しかし,同じEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブに関しては,EGFR発現やEGFR増幅(コピー数の増加)が効果予測因子である可能性は示されていましたが,活性EGFR遺伝子変異に関する研究成績は多くありませんでした。この理由を推測すると,ゲフィチニブは欧米人では効果が確認されていませんが,エルロチニブは,欧米人でも効果が確認され,EGFRチロシンキナーゼのATP結合部位への親和性がゲフィチニブよりもエルロチニブが高いことから,EGFR発現やEGFR増幅(コピー数の増加)とエルロチニブの効果が関連することから,活性EGFR遺伝子変異がなくとも,EGFRが発現されていれば十分と考えたのではないと思っています。
 しかし,活性EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対して,ゲフィチニブは標準化学療法以上の効果を示すことが示されましたので,エルロチニブも同様なことが言えるのではないかと考えて,この試験をおこなったのだろうと推測しています。
 結果は,活性EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対して,エルロチニブも標準化学療法より無増悪生存期間に対する効果が優れていることが確認されました。また,この試験に参加した患者を対象とした検討でも,c-MET増幅を含む他の因子は,効果に関連しないことが認められています。
 すなわち,エルロチニブの最も信頼できる効果予測因子は,活性EGFR遺伝子変異であることと推定されます。
 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬は投与開始2年程度で抵抗性を獲得し,抵抗性獲得の一つの機序としてc-MET増幅があると考えられていますし,今回のESMOでは,エルロチニブとc-MET阻害薬の併用を検討した第II相試験が報告されているようですので,c-MET増幅のエルロチニブの効果への影響は,更なる研究が必要と思われました。
 興味は,活性EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対しては,ゲフィチニブとエルロチニブのどちらがより効果的かということです。可能であれば,活性EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対しては,ゲフィチニブとエルロチニブの効果を直接比較する試験が行うことを期待したいものです。

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