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ASCO2009情報:このようなデザインで卵巣がんに対するパクリタキセル週1回投与が効果がないと言えるのか?

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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 昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,卵巣がんに対してパクリタキセルの3週毎投与より,週1回投与が優れていることを示した日本のランダム化比較試験結果が報告されました。今年のASCOでも,卵巣がんに対して,パクリタキセルとカルボプラチンの週1回投与と3週毎投与の効果を比較したオランダのランダム化比較試験が報告され,両群の効果に差がないと報告されました。抄録に基づいて,この情報をお伝えし,問題点について考えてみます。


Burg ME et al. ASCO 2009 #5538

対象患者:
 PS 0-2,FIGO分類II期-IV期の卵巣がん患者267例

研究デザイン:ランダム化比較試験

ランダム化:
 病期,PS,腫瘍径,医療機関を層別因子として,パクリタキセルとプラチナ製剤併用療法を3週毎に行う群(PC3w群,134例)または週1回投与する群(PCw群,133例)にランダム割り付け

治療群
PC3w群:パクリタキセル(175mg/m2)とシスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC=6を3週毎に3サイクル投与
PCw群:パクリタキセル(90mg/m2)とシスプラチン70mg/m2またはカルボプラチンAUC=4を週1回(day 1,8,15 及びday 29,36,43)に投与
 その後,両群ともPC3wのレジメンを6サイクル継続

効果指標:
(主要評価項目)無増悪生存期間,全生存期間
(副次的評価項目)奏効率,有害事象

結果
1. 患者状況

 両群の背景因子に偏りは認められない

2. 治療状況
・Dose-intensity中央値
パクリタキセル(単位不明) PC3w群:58(47-58),PCw群:60(36-60)
シスプラチン(mg/m2/w)   PC3w群:25(22.5-25),PCw群:44.7(30-44.7)
カルボプラチン(AUC/w)  PC3w群:2(1.6-2),PCw群:44.72.7(1.6-2.7)

3. 有効性(追跡期間中央値39ヵ月)
a. 無増悪生存期間
・中央値 PC3w群:18ヵ月,PCw群:19ヵ月
・5年無増悪生存期間 PC3w群:20%,PCw群:18%
 P=0.63

b. 全生存期間
・中央値 PC3w群:44ヵ月,PCw群:45ヵ月
・5年全生存期間 PC3w群:36%,PCw群:37%
 P=0.87

c. 奏効率
 PC3w群:72%,PCw群:74%,P=0.68

 いずれの効果指標でも両群に有意差が認められない

4. 有害事象
・グレード3-4白血球減少 PC3w群:5.5%,PCw群:8.7%,P<0.0001 
・グレード3-4顆粒球減少 PC3w群:16.7%,PCw群:11.7%,P<0.0001
・グレード3-4血小板減少 PC3w群:1.75%,PCw群:1.55%
・治療の遅延 PC3w群:37%,PCw群:9%
・グレード2-3筋肉・関節痛 PC3w群:6.3%,PCw群:3.5%
・グレード2-3末梢神経障害 PC3w群:6%,PCw群:1.6%

 PCw群の有害事象が少ない傾向が認められる

著者らの結論
 パクリタキセルとシスプラチン製剤の週1回投与は,忍容性も良好で,顆粒球減少,神経毒性,筋肉・関節痛も少ないが,全生存期間,無増悪生存期間または奏効率という効果に関しては,有効性は認められなかった。

<コメント>
 この試験の結果は,全ての効果指標で,パクリタキセルとシスプラチン製剤の週1回投与は,3週毎投与と有意差が認められないと報告されています。この研究デザインは,最初の9週間の治療として,パクリタキセルとシスプラチン製剤の3週毎投与群と週1回投与群の効果を比較する設定になっていますが,その後,両群ともパクリタキセルとシスプラチン製剤の3週毎の6サイクル投与を追加していますので,両群の治療内容はほぼ同じで,効果に差が認められないのは当然と言えると思います。
 昨年のASCOに報告された試験は,対象患者はほぼ同じですが,プラチナ製剤をカルボプラチンAUC 6.0を3週毎に投与する方法に固定し,パクリタキセル週1回投与群と3週毎投与群の効果を検討しています。また,これらのレジメンと最低6サイクル行い,奏効性が認められた場合に9サイクルまで追加すると定められています。この比較試験で,パクリタキセル(90mg/m2)週1回投与が,170mg/m2の3週毎投与群に比較して,奏効率には有意差が認められないものの,無増悪生存期間や全生存期間に有意差が認められています。
 今回紹介した臨床試験は,プラチナ製剤も週1回投与となっていますし,シスプラチンかカルボプラチンのいすれかを選択することになっています。それぞれの薬剤の設定された投与量が同じような効果を示すのかどうかも不明です。
 まとめますと,この研究デザインは,最初の9週間のパクリタキセルとシスプラチン製剤の週1回投与群と3週毎投与群の効果を比較しただけであり,パクリタキセルの治療効果を評価するものになっていないと思われます。
 最終的には論文が発表されたときに吟味しなければならないかもしれませんが,研究目的を明確にし,目的を達成するための研究デザインが必要と思われます。

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