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ASCO2009情報:非小細胞肺がんの維持療法としてアバスチンとタルセバの併用は有効?!(コメント改訂)

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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 先日,今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,進行非小細胞肺がんの標準化学療法後の維持療法として効果を評価したプラセボ比較,二重盲検,ランダム化比較第III相試験(SATURN試験)でエルロチニブ(商品名タルセバ)は無増悪生存期間を有意に増加することをお伝えしました。今回のASCOでは,進行非小細胞肺がんの標準化学療法後の維持療法として,ベバシズマブ(商品名アバスチン)とエルロチニブの併用群とベバシズマブとプラセボ投与群の効果を比較したプラセボ比較,二重盲検,ランダム化比較第III相試験(ATLAS試験)結果も発表されています。この試験の情報は,Medscapeや日経メディカルオンラインにも掲載されていましたので,それらに基づいて,この試験結果を紹介します。(SATURN試験の無増悪生存期間のデータがわかりましたので,コメントを訂正しました)

  
Miller VA et al. ASCO 2009 #LBA8002

対象患者:
 プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法とベバシズマブ投与による1次療法後,腫瘍増悪が認められないまたは重篤な有害反応が認められないIIIB期またはIV期非小細胞肺がん患者768例

研究デザイン:プラセボ比較,二重盲検,ランダム化比較第III相試験

方法:
 プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法とベバシズマブ(15mg/kg)の3週毎4サイクル後,腫瘍増悪が認められないまたは重篤な有害反応が認められない患者をベバシズマブとエルロチニブ(150mg/日)併用群またはベバシズマブとプラセボ投与群にランダムに割り付けた。

効果指標
(主要評価項目)無増悪生存期間
(副次的評価項目)全生存期間,有害事象

結果
1. .無増悪生存期間
(各群の症例数不明)(追跡期間中央値8.3ヵ月)
・中央値 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:3.7ヵ月,エルロチニブ併用群:4.8ヵ月
・3ヵ月無増悪生存期間 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:53.4%,エルロチニブ併用群:67.7%
・6ヵ月無増悪生存期間 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:28.4%,エルロチニブ併用群:40.3%
 ハザード比0.722,95%信頼区間0.592-0.881,P=0.0012

 データ安全性モニター委員会は2回目の中間解析で,試験の主要目的が達成されたために,試験の中止を推奨した。

 年齢や性別、喫煙歴などのサブグループ解析でも,エルロチニブ併用群が無増悪生存期間が良好であることが示された。

2. 有害事象
・重篤な有害事象 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:22.9%,エルロチニブ併用群:16.3%
・出血 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:1.4%,エルロチニブ併用群:1.6%
・肺出血 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:0.5ヵ月,エルロチニブ併用群:0.8ヵ月
・動脈血栓塞栓症 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:1.4%,エルロチニブ併用群:2.2%
・グレード3-4皮疹 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:0.5%,エルロチニブ併用群:10.4%
・下痢 プラセボ(ベバシズマブ単独)群:0.8%,エルロチニブ併用群:9.6%

 ベバシズマブ,エルロチニブの有害反応は,これまで報告された内容と同様なものであった。

著者らの結論
 化学療法とベバシズマブ後のベバシズマブ治療にエルロチニブを併用することは,局所進行,再発,転移性肺がんの1次療法を受けた患者の無増悪生存期間を有意に改善する。

<コメント>
 SATURN試験でエルロチニブは非小細胞肺がんの1次療法後の維持療法として有効であることが報告されています。このATLAS試験でもベバシズマブとエルロチニブ併用療法が,非小細胞肺がんの維持療法として,ベバシズマブ単独治療に比較して,有効であることが認められました。
 エルロチニブ単独とベバシズマブとエルロチニブ併用療法のどちらが維持療法として優れているのかが問題になると思いますが,SATURN試験のエルロチニブ群の50%無増悪生存期間は12.3週と報告されていますので,エルロチニブ単独群に比較するとエルロチニブとベバシズマブ併用群が良好な印象がありますが,これらの効果は直接比較試験により判断すべきかもしれません。
 また,この試験は主要目的が達成できたとデータ安全性モニター委員会が試験の中止を推奨したと記載されていますが,追跡期間も短く,また,全生存期間が全く解析できない段階で,試験が中止されることは納得がいきません。
 更に,エルロチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬は,EGFR遺伝子変異やEGFR増幅などの効果予測因子を有する例により効果を示すことが明らかになっていますので,ATLAS試験でも,これらの因子の影響を検討をする必要があると思われます。
 高薬価の薬剤の併用療法の評価は,安易に行うのではなく,評価基準をより厳しくし,費用対効果を明確にしなければならないのではないでしょうか。 

<関連情報>
日経メディカルオンライン
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/asco2009/200906/510949.html
Medscape記事
http://www.medscape.com/viewarticle/703636
ASCO2009情報:タルセバは非小細胞肺がんの1次化学療法の維持療法としても有効!?
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=309
イレッサは,非小細胞肺がんの維持療法としては効果が認められない
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1400
学会情報:EGFR遺伝子変異は,タルセバの効果予測因子になる!?
http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=231
イレッサは,非小細胞肺がんの維持療法としては効果が認められない
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1400
進行・転移性非小細胞肺がんに対するイレッサとドセタキセルの比較試験
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1516
臨床的背景因子でもタルセバの適応を決めることができるかもしれません
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1458
タルセバは喫煙者には効果を発揮しない
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1455
日本におけるエルロチニブの第II相試験
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1583
タルセバの効果予測因子に関する研究から
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1481
タルセバとアバスチンの臨床試験から
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1218