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ASCO2009情報:BSI-201がトリプルネガティブ乳がんに有効である可能性が示された

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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 エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR),HER-2が陰性の乳がんは,トリプルネガティブ乳がんと呼ばれ,他の特性を有する乳がんより一般的に予後が不良であることが知られています。これらのトリプルネガティブ乳がんは,BRCA-1の機能不全などの相同的組み換え(homologous recombination)を介するDNA二重らせん修復機能が欠落していることが知られ,基礎研究などで,DNA修復機能が不足しているBRCA-1欠損細胞は,ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)阻害に感受性があることから,PARP1阻害薬は,トリプルネガティブ乳がんに効果を示すことが期待されています。米国オーランドで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,PARP1阻害薬であるBSI-201のトリプルネガティブ乳がん患者に対する効果を評価したランダム化第II相試験結果が報告されたようです。ASCOのニュース,日経メディカルオンライン,Sanofi-Aventis社のプレスリリースにも取り上げられていますので,これらの情報に基づいてお伝えします


O'Shaughnessy J et al. ASCO 2009 #3

対象患者:
 これまでに2レジメン以内の化学療法の経験があり,ER-,PgR-,HER-2-を示す転移がある乳がん患者12例(抄録では86例)

研究デザイン:ランダム化比較,第II相試験

方法:
 対象患者をゲムシタビンとカルボプラチン併用化学療法単独群(59例)または化学療法とBSI-201の併用群(BSI-201併用群,57例)にランダムに割り付けた。
<治療法>
化学療法単独群:ゲムシタビン1000mg/m2とカルボプラチン(AUC=2)をday1およびday8に静脈内投与を行い,3週毎に繰り返す。
BSI-201併用群:上記化学療法に加え,BSI-201(5.6mg/kg)の静脈内投与をday1,day4,day8,day11に併用し,これらを3週毎に繰り返す。

 化学療法単独群は,2サイクル毎に治療効果を評価し,増悪が認められた場合に,BSI-201併用投与に切り替えることも可能とした。

効果指標
 clinical benefit rate(CR+PR+6ヵ月以上のSD),無増悪生存期間,全生存期間

結果:
1. 有効性
a. clinical benefit rate

 化学療法単独群:21%,BSI-201併用群:62%,P=0.0002

b. 奏効率
 化学療法単独群:16%,BSI-201併用群:48%,P=0.002

c. 50%無増悪生存期間
 化学療法単独群:3.3ヵ月,BSI-201併用群:6.9ヵ月
 ハザード比0.342,95%信頼区間0.200-0.584,P<0.0001

d. 50%全生存期間
 化学療法単独群:5.7ヵ月,BSI-201併用群:9.2ヵ月
 ハザード比0.348,95%信頼区間0.189-0.64,P=0.0005

 すべての効果指標で,BSI-201併用群は,化学療法単独群に比較して,有意に良好

2. 有害事象
・グレード3-4好中球減少 化学療法単独群:31/59ヵ月,BSI-201併用群:25/57
 BSI-201併用群には発熱性好中球減少は認められなかった。
 他に血小板減少,貧血が認められたが両群に差は認められない。

著者らの結論
 BSI-201とゲムシタビン,カルボプラチン併用は,化学療法単独に比較して,clinical benefit rate,奏効率,無増悪生存期間,全生存期間を有意に改善する。BSI-201併用群の忍容性は良好であり,化学療法に併用することによる有害反応は認められなかった。

<コメント>
 治療選択肢が限られているトリプルネガティブ乳がんに化学療法にPARP-1阻害薬であるBSI-201を併用することで効果が増強したことは,非常に興味ある研究結果と思います。
 ASCOニュースによれば,PARP-1やPARP-2は,DNA傷害の結果として活性化され,正常組織では,BRCA1,BRCA2やPARP-がDNA傷害の修復に関与するが,BRCA1/BRCA2遺伝子変異が認められる腫瘍細胞ではDNAの修復はPARPに依存することが知られているとのこと。そのため,PARP阻害は,選択的にBRCA1 またはBRCA2-欠損細胞に障害性を示す。その作用機序としては,一本鎖のDNAの切断の蓄積が,DNA複製時期の二本鎖のDNA切断に変換され,結果として,複製の段階で障害作用を示すためと考えているようですが,PARP-1やPARP-2は,DNA修復だけでなく。クロマチンドメインの組織化,転写の変化や細胞分裂のコントロールにも関与するとのこと。
 すなわち,BSI-201は,PARPのDNA修復機能を阻害することによってがん細胞のアポトーシスを誘導することで,抗腫瘍作用を発揮,化学療法の効果を増強する可能性があると考えられます。

 しかし,この効果は,トリプルネガティブ乳がんのみに示されるものなのか,他のタイプの乳がんにも効果を示すのかが不明ですし,投与量,投与回数や薬物動態や薬力学との関連性についても明らかにする必要がありそうです。
 また,化学療法としてゲムシタビンとカルボプラチンを使用している理由も不明です。乳がんの標準治療であるアントラサイクリン製剤やタキサン製剤を含むレジメンでは併用効果ないのかという点も知りたいところです。
 少数例での検討ですので,有害反応に関してはわからないことが多いと思います。
 治療選択肢が限られているトリプルネガティブ乳がん患者に対する有望な薬剤と思われますので,十分な研究を行って欲しいと思います。
 BSI-201の今後の研究を楽しみにしたいと思います。

<関連情報> 
ASCOニュース
http://www.asco.org/ASCOv2/Meetings/ASCO+Annual+Meeting/2009+ASCO+Daily+News/Tuesday%2C+June+2%2C+2009/Novel+BSI-201+Targeted+Therapy+Holds+Promise+for+Patients+with+Metastatic+Triple-negative+Breast+Cancer
Sanofi-Aventis社プレスリリース
http://en.sanofi-aventis.com/binaries/20090531_bsi_201_en_en_tcm28-25235.pdf
日経メディカルオンライン
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/asco2009/200906/510980.html

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