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ASCO2009情報:非小細胞肺がんの2次療法としてのザクティマの効果(3つのランダム化比較試験)

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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 血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)と上皮増殖因子受容体(EGFR)などシグナルを阻害するバンデタニブ(商品名ザクティマ)が開発されています。5月29日から米国オーランドで開催されていた米国臨床腫瘍学会(ASCO)で非小細胞肺がん患者を対象とするバンデタニブの3つのランダム化比較試験結果が報告されたようですので,これらの試験について,抄録とAstraZeneca社のプレスリリースに基づいて紹介したいと思います。


A. ZODIAC試験
 進行非小細胞肺がん患者の2次療法として,ドセタキセル単独群とドセタキセルとバンデタニブの併用群を比較したランダム化,二重盲検,プラセボ比較第III相試験
Herbst RS et al. ASCO 2009 #CRA8003

対象患者:
 標準化学療法後に増悪が認められた,PS 0-1,IIIB期またはIV期非小細胞肺がん患者1391例

研究デザイン:ランダム化,二重盲検,プラセボ比較第III相試験

方法:下記の2治療群にランダム割付(層別因子不明)
バンデタニブ群(694例):ドセタキセル75mgm2を3週毎,最大6サイクルの投与に,バンデタニブ100mg/日の経口投与を併用
プラセボ群(697例):ドセタキセル75mgm2を3週毎,最大6サイクルの投与に,プラセボの経口投与を併用

効果指標
(主要評価項目)無増悪生存期間
(副次的評価項目)全生存期間,奏効率,症状悪化までの期間,有害事象

結果
1. 患者状況

 両群に患者背景に偏りは認められない

2. 有効性(追跡期間中央値12.8ヵ月)
・50%無増悪生存期間
 バンデタニブ群:17.3週,プラセボ群:14.0週
 (全例)ハザード比0.79,97.58%信頼区間0.70-0.90,P<0.001
 (女性)ハザード比0.79,P=0.024

 バンデタニブ群は,プラセボ群に比較して,有意に無増悪生存期間が良好(増悪の確認は4週毎に行っている場合が多いため,無増悪生存期間を週単位で表記することはバイアスが入りやすいと考えられるが・・・)

・奏効率
 バンデタニブ群:17%,プラセボ群:10%,P<0.001

・症状悪化までの期間(FACT-L Lung Cancer Subscale)
 具体的なデータ記載なし
 ハザード比0.78,P=0.002

・全生存期間
 全生存期間もバンデタニブ群が良好の傾向を示したが,両群に有意差は認められない。
 ハザード比0.91,97.52%信頼区間0.78-1.07,P=0.196

3. 有害事象
・下痢 バンデタニブ群:42%,プラセボ群:33%
・皮疹 バンデタニブ群:42%,プラセボ群:24%
・好中球減少 バンデタニブ群:32%,プラセボ群:27%
・悪心 バンデタニブ群:23%,プラセボ群:32%
・嘔吐 バンデタニブ群:16%,プラセボ群:21%
・貧血 バンデタニブ群:10%,プラセボ群:15%
・QT延長 バンデタニブ群で2%以下

 バンデタニブ群は,下痢,皮疹,好中球減少の有害事象が多く,悪心,嘔吐,貧血は少ない。

著者らの結論
 この試験で,バンデタニブとドセタキセル併用群とドセタキセル単独群との比較で,無増悪生存期間の延長という主要目的を達成できた。バンデタニブは非小細胞肺がんの標準的な化学療法との併用の第III相試験で,臨床的な有効性を示した初めての経口分子標的治療薬である。

B. ZEAL試験
 進行非小細胞肺がん患者の2次療法として,ペメトレキセド(商品名アリムタ)単独群とペメトレキセドとバンデタニブの併用群を比較したランダム化,二重盲検,プラセボ比較第III相試験
De Boer R et al. ASCO #8010

対象患者:
 1次化学療法後に増悪が認められたPS 0-2のIIIB期またはIV期非小細胞肺がん患者534例

研究デザイン:ランダム化,二重盲検,プラセボ比較第III相試験

方法:対象患者を下記の2治療群にランダムに割り付けた(層別因子不明)
バンデタニブ群(256例):ペメトレキセド500mg/m2,3週毎(最大6サイクル)投与に,バンデタニブ100mg/日の経口投与を併用
プラセボ群(278例):ペメトレキセド500mg/m2,3週毎(最大6サイクル)投与に,プラセボの経口投与を併用

効果指標
(主要評価項目)無増悪生存期間
(副次的評価項目)全生存期間,奏効率,症状悪化までの期間(Lung Cancer Symptom Scale) ,有害事象

結果
1. 患者状況
 両群の患者背景因子に偏りは認められない

2. 有効性(追跡期間中央値9.0ヵ月)
・50%無増悪生存期間
 バンデタニブ群:17.6週,プラセボ群:11.9週
 ハザード比0.86,97.58%信頼区間0.69-1.06,P=0.108

 バンデタニブ群が無増悪生存期間が良好の傾向を示すが,有意差は認められない

・全生存期間
 50%全生存期間,全生存率のデータは示されていない
 ハザード比0.86,97.54%信頼区間0.65-1.13,P=0.219

 全生存期間には両群の有意差は認められない

・奏効率
 バンデタニブ群:19.1%,プラセボ群:7.9%,P<0.001
 
 奏効率に関しては,バンデタニブ群が有意に良好

・症状悪化までの期間(Lung Cancer Symptom Scale)
 具体的なデータの記載なし
 ハザード比0.61,P=0.004

 バンデタニブ群の症状悪化までの期間が有意に良好

3. 有害事象
・皮疹 バンデタニブ群:38%,プラセボ群:26%
・下痢 バンデタニブ群:26%,プラセボ群:18%
・高血圧 バンデタニブ群:12%,プラセボ群:3%
・貧血 バンデタニブ群:8%,プラセボ群:22%
・悪心 バンデタニブ群:29%,プラセボ群:37%
・嘔吐 バンデタニブ群:15%,プラセボ群:22%
・倦怠感 バンデタニブ群:37%,プラセボ群:45%
・無力 バンデタニブ群:11%,プラセボ群:17%
・QT延長 バンデタニブ群1%以下
 バンデタニブ群で出血,血栓塞栓の増加は認められない
 
 皮疹,下痢,高血圧はバンデタニブ群に多いが,貧血,悪心,嘔吐,倦怠感などはプラセボ群が多く,バンデタニブはペメトレキセドの有害事象を軽減している印象がある

著者らの結論
 バンデタニブとペメトレキセドの併用でペメトレキセド単独に比較して,統計的有意に無増悪生存期間を延長するという主要目的は達成できなかったが,バンデタニブとペメトレキセドの併用療法は,治療の経験のある非小細胞肺がん患者で臨床的な有用性があることが示された。バンデタニブとペメトレキセドの併用療法の忍容性は良好である。

C. ZEST試験
 進行非小細胞肺がんの2次療法として,バンデタニブとエルロチニブ(商品名タルセバ)の効果を比較し,非劣性を評価した,ランダム化,二重盲検,第III相試験
Natale RB et al. ASCO 2009 #8009

対象患者:
 1-2レジメンの化学療法の経験のあるPS 0-2のIIIB期またはIV期非小細胞肺がん患者1240例

研究デザイン:ランダム化,二重盲検,第III相試験(優越性試験)

方法:対象患者をバンデタニブ(300mg/日)投与群(623例)またはエルロチニブ(150mg/日)投与群(617例)にランダムに割付,腫瘍増悪または耐えられない有害事象が出現するまで投与を継続

効果指標
(主要評価項目)無増悪生存期間(バンデタニブのエルロチニブに対する優越性を評価)
(副次的評価項目)全生存期間,奏効率,症状悪化までの期間(EORTC-QLQ),有害事象

結果
1. 患者状況

 両群に患者背景に偏りは認められない

2. 有効性(追跡期間中央値14ヵ月)
・無増悪生存期間
 50%無増悪生存期間,無増悪生存率のデータ記載なし
 ハザード比0.98,95.22%信頼区間0.87-1.10,P=0.721

 優越性や非劣性の基準に関しての記載はないが,バンデタニブは,エルロチニブに対して,優越性は証明されず,非劣性が認められた

・全生存期間
 50%全生存期間,全生存率のデータ記載なし
 ハザード比1.01,95.08%信頼区間0.89-1.16,P=0.830

 全生存期間は両群に有意差を認めない

・奏効率
 バンデタニブ群:12%,エルロチニブ群:12%

 奏効率でも両群に有意差なし

・症状悪化までの期間
 疼痛(ハザード比0.92,P=0.289),呼吸困難(ハザード比1.07,P=0.407)でも,両群に有意差が認められない。

3. 有害事象
・下痢 バンデタニブ群:50%,エルロチニブ群:38%
・高血圧 バンデタニブ群:16%,エルロチニブ群:2%
・皮疹 バンデタニブ群:28%,エルロチニブ群:38%
・グレード3以上の全有害事象 バンデタニブ群:50%,エルロチニブ群:40%
・QT延長 バンデタニブ群:5%

 下痢,高血圧はバンデタニブ群に多く,皮疹はエルロチニブ群に多い

著者らの結論
 この試験では,これまで治療の経験のある進行非小細胞肺がん患者で,エルロチニブ群に比較して,バンデタニブ群が無増悪生存期間を有意に改善するという主要目的を達成できなかった。しかし,バンデタニブとエルロチニブは,非劣性の分析で,無増悪生存期間と全生存期間に関しては同等の効果があることが示された。

<コメント>
 非小細胞肺がん患者の2次療法としてのバンデタニブの効果を評価した3つのランダム化比較試験結果を紹介しました。
 ゲフィチニブやエルロチニブは,化学療法との併用効果が認められていませんでしたが,バンデタニブは,ドセタキセルとの併用で無増悪生存期間を僅かですが,有意に改善していることが示されています。ペメトレキセド併用で有意差が得られなかった理由は,おそらく症例数が不足しているためと考えられます。すなわち,デザインする際に,バンデタニブの効果をより高いと予測したために,症例数が少なくなったと思われます。しかし,症例数を多くして有意差をでるようにしたとしても,50%無増悪生存期間の差は1ヵ月程度と思われますので,過剰な期待は出来ないかも知れません。
 化学療法との併用効果が認められたということは,作用機序を考える上で興味がある所見と思います。
 さらに興味があるのは,バンデタニブ併用によって,ペメトレキセドの有害反応である貧血や悪心・嘔吐を軽減しているような印象が認められることです。
 しかし,エルロチニブとの比較では,予定した優越性が証明できず,非劣性が証明されています。化学療法の併用ではバンデタニブの投与量は100mg/日ですが,エルロチニブとの比較試験では300mg/日となっています。この投与量の影響をどう考えて良いのかわかりませんが,投与量を増量することによりQT延長の有害反応が増加していることが気になります。
 最近,EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がんに対して,ゲフィチニブはカルボプラチン,パクリタキセル併用の表重化学療法より有効であることが示されています。
 バンデタニブもEGFRチロシンキナーゼ阻害作用を示す薬剤ですので,ゲフィチニブのような効果予測因子があると推定されますが,EGFR遺伝子変異が認められない非小細胞肺がんにもバンデタニブは効果を示すのかという点も興味あるところです。
 有害反応として,下痢,皮疹,高血圧が認められますので投与に際しては十分な有害反応対策が必要と思われます。また,投与量を増量すればQT延長も認められるようですので,安易な増量はしない方が良いのかも知れません。出血や血栓塞栓に関しては,現在の症例数では増加は認められないと記載されていますが,十分な注意が必要と思われます。
 これらの試験の論文発表を楽しみにしたいと思います。

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