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ASCO2009情報:HER-2陽性胃がんに対してもハーセプチンは有効(ToGA試験)

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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 HER-2過剰発現が認められる胃がんに対して,トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が有効である可能性が示されていますが,米国オーランドで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO)で,進行胃がん(食道・胃接合部がんを含む)患者を対象として,シスプラチンとフッ化ピリミジン併用の化学療法単独群とトラスツズマブ併用群の効果を比較した,日本を含む国際ランダム化比較第III相試験(ToGA試験)の中間解析結果が報告されています。抄録に基づいて,この情報を紹介します。


Van Cutsem E et al. ASCO 2009 #LBA4509

対象患者:HER-2陽性の局所進行,再発,または転移が認められる胃食道がんおよび胃がん患者594例

研究デザイン:オープンラベル,ランダム化第III相試験

方法:
 対象患者を下記の化学療法単独群または化学療法にトラスツズマブを併用した群(トラスツズマブ併用群)にランダムに割り付けた。層別因子は,腫瘍の進行状況(進行 vs 転移),部位(胃 vs 食道胃接合部),腫瘍測定可能度(測定可能 vs.測定不能),PS(0-1 vs 2),薬剤(5-FU vs カペシタビン)と推定される。

化学療法単独群:day 1にシスプラチン80mg/m2を静脈内投与し,フッ化ピリミジン製剤(カペシタビン経口投与または5-FU静脈内投与)を投与した。カペシタビンは 1,000mg/m2を1日2回をday 1-14に経口投与,5-FU800mg/m2/日をday 1-5で持続静脈内注射した。シスプラチンとフッ化ピリミジンの併用を3週毎に6サイクル繰り返した。(Roche社のプレスリリースによれば殆どがカペシタビン投与例であるとのこと)
トラスツズマブ併用群:上記化学療法にトラスツズマブ6mg/kgを3週毎に併用。トラスツズマブは腫瘍増悪まで投与継続。

効果指標
(主要評価項目)全生存期間
(副次的評価項目)奏効率,無増悪生存期間,無増悪期間,奏効期間,有害事象

結果
1. 患者状況
 3807例の腫瘍を中央でHER-2の発現状況を検査し,22.1%が陽性であった。
 HER-2陽性患者594例を上記治療群にランダム割付した。
 両群の患者背景に偏りは認められない。

2. 50%全生存期間(追跡期間中央値17.1ヵ月)
 トラスツズマブ併用群:13.5ヵ月,化学療法単独群:11.1ヵ月
 ハザード比0.60,95%信頼区間0.60-0.91,P=0.0048

 全生存期間は,トラスツズマブ併用群が有意に良好である。

3. 50%無増悪期間
 トラスツズマブ併用群:6.7ヵ月,化学療法単独群:5.5ヵ月
 ハザード比0.71,95%信頼区間0.59-0.85,P=0.0002

 無増悪生存期間も,トラスツズマブ併用群が有意に良好である。

4. 奏効率
 トラスツズマブ併用群:47.3%,化学療法単独群:34.5%,P=0.0017

 奏効率も,トラスツズマブ併用群が有意に良好である。

4. 有害事象
・心臓の有害事象 トラスツズマブ併用群:6%(G3-4,3%),化学療法単独群:6%(G3-4,1%)
・無症候性の左心室駆出率低下(LVEF<50) トラスツズマブ併用群:5.9%,化学療法単独群:1.1%

 安全性プロフィールは,トラスツズマブ併用群で予期しない有害事象がなく同等である。
 両群の症候性うっ血性心不全には差は認められない。
 無症候性左心室駆出率(LVEF)は,トラスツズマブ併用群5.9%,化学療法単独群1.1%であった。

著者らの結論
 進行胃がんで抗HER-2療法を研究する初めてのランダム化比較試験で,化学療法とトラスツズマブ併用群が,化学療法単独群に比較して,優れていることが示された。トラスツズマブは,HER-2陽性胃がんに新たに,有効で,忍容性が高い治療法であることを示している。

<コメント>
 日本を含む国際ランダム化比較第III相試験で,HER-2陽性切除不能進行胃・食道がんまたは胃がん患者に対して,(この情報には記載しませんでしたが)特に免疫組織化学(IHC3+)または蛍光in situハイブリダイゼーション陽性のHER-2過剰発現が認められる例で,トラスツズマブ併用療法が生存期間を有意に延長することを示した興味ある試験と思います。

 この試験では,胃・食道がんまたは胃がん患者を対象に含めていますし,フッ化ピリミジン製剤もカペシタビン経口投与と5-FU静脈内投与が混在しています。大腸がんでは,カペシタビン投与は,5-FUとホリナート併用療法と非劣性が認められ,オキサリプラチン,5-FU,ホリナート併用のFOLFOX-4療法とオキサリプラチンとカペシタビン併用のXELOX療法とも非劣性が証明されています。進行胃がんの1次療法として,シスプラチンと5-FUの併用療法とシスプラチンとカペシタビン併用療法の比較試験で非劣性が認められていますが,カペシタビン併用群がやや不利な条件でしたので,層別を適切に行えば,優越性も証明できたか可能性もあります。また,経口フッ化ピリミジン製剤として,S-1(商品名ティーエスワン)もシスプラチンの併用で,優れた効果があることが認められています。すなわち,フッ化ピリミジン製剤と一括りするのではなく,薬剤別に比較しなければならないと思われます。
 とはいえ,トラスツズマブ併用により進行胃がんの生存期間が改善される可能性が示されたことは,明るい情報と思いますし,今後の進行がん治療を前進する可能性もあると思われます。

 <関連情報>
進行胃がんに対するゼローダとシスプラチン併用と5-FUとシスプラチン併用の非劣性試験結果
http://clinicalscience.info/modules/cancer_research/details.php?bid=1674
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進行胃がんに対するシスプラチンとティーエスワン療法とシスプラチンと5-FU療法のランダム化比較試験http://clinicalscience.info/modules/canser_info_blog/details.php?bid=278
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