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進行胃がんに対するシスプラチンとティーエスワン療法とシスプラチンと5-FU療法のランダム化比較試験

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がん医療総論
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 日本で行われた進行胃がんに対するシスプラチンとS-1(商品名ティーエスワン)併用療法とS-1単独投与の効果を比較したランダム化比較試験(SPIRITS試験)で,シスプラチンとS-1併用療法が優れた効果を示すことが証明され,進行胃がんの標準化学療法になるのではと考えられています。2009年1月15-17日に米国サンフランシスコで開催されてた消化器がんシンポジウムで,米国,欧州,南アメリカで行われた進行胃がんまたは胃・食道腺がん患者を対象として,シスプラチンとS-1併用療法(CS療法)とシスプラチンと5-FU(CF療法)の効果比較を行った国際ランダム化比較試験結果が発表されたようです。抄録に基づいて,この発表を紹介します。


Ajani JA et al. 2009 Gastrointestinal Cancers Symposium  #8

対象患者:治療の経験のない進行胃がん/胃・食道腺がん患者1053例(適格例1029例)

方法:対象患者を次の2群にランダムに割り付けた
<治療群>
CS群(521例):シスプラチン75mg/m2をday1に静脈内投与し,S-1(25 mg/m2)を1日2回3週間経口投与し,1週間休薬,これらを4週毎に繰り返す(サイクル数記載なし)
CF群(508例):シスプラチン100mg/m2をday1に静脈内投与し,5-FU1000mg/m2を5日間持続点滴,これらを4週毎に繰り返す(サイクル数記載なし)

効果指標:
(主要評価項目)全生存期間
(副次的評価項目)奏効率,無増悪生存期間,有害事象

結果
1. 患者状況と治療状況
 両群に患者背景因子に偏りは認められない。
 治療サイクル数(中央値)は両群とも4サイクル。

2. 50%全生存期間
 CS群:8.6ヵ月,CF群:7.9ヵ月
 ハザード比0.92,95%信頼区間0.80-1.05,P=0.1983

 主要評価項目である全生存期間には,両群に有意差は認められない。

3. 有害事象(グレード3/4)
・好中球減少       CS群:18.6%,CF群:40.0%
・発熱性好中球減少  CS群:1.7%,CF群:6.9%
・口内炎          CS群:1.3%,CF群:13.8% 
・全グレード腎機能異常 CS群:18.8%,CF群:33.5% 
・重篤な低カリウム血症 CS群:3.6%,CF群:10.8%
・治療関連死       CS群:2.5%,CF群:4.9%,P<0.05

著者らの結論
 CS群は,有意な生存率の改善傾向をみとめたが,両群の全生存期間には有意差は認められない。CS群は,CF群に比較して有意に良好な安全性プロフィールを示した。

<コメント>
 学会抄録ですので,研究デザインや副次的評価項目のデータなど詳細は不明ですので,結論的なことは言えませんが,今回の用法・用量でのシスプラチンとS-1併用療法は,シスプラチンと5-FU併用療法と全生存期間には有意差がない結果であると思います。
 しかし,50%全生存期間が8.5ヵ月とSPRITS試験の13ヵ月と比較して,良くない印象があります。SPRITS試験の結果との違いは,日本人と欧米人の違い(例えばCYP2A6の遺伝子多型などの違い),用法・用量の違いなどが考えられますが,どうしてSPRITS試験と同じ用法・用量に設定しなかったのか疑問です。
 また,シスプラチンと5-FU併用療法群の有害反応の頻度が高いことが示されていますが,この群のシスプラチンの投与量が100mg/m2とシスプラチンとS-1併用療法群の75mg/m2と比較して多いことも影響しているのではないかと思われます。胃がんに対しては,低用量(30mg/m2)のシスプラチンでも5-FUとの併用効果が認められるとの報告もありますので,100mg/m2とする必要はないのかも知れません。
 今回の用法・用量でも,シスプラチンと5-FUの併用療法とは生存期間に対する効果には有意差がないことが示されていますのでシスプラチンとS-1の併用療法は臨床的に意義のあるレジメンであると評価出来ますが,シスプラチンとS-1の併用療法は,進行胃がんの世界の標準治療となる可能性もありますので,至適な用法・用量を用いた臨床試験で効果を評価すべきではないでしょうか。 

<関連情報>
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