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学会情報:フェマーラとアリミデックスの効果比較

カテゴリ : 
がんの薬物療法
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今年9月に米国・ワシントンで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)関連の乳がんシンポジウムで,アナストロゾール(商品名アリミデックス)とレトロゾール(商品名フェマーラ)の術後補助療法の効果を評価したATAC試験及びBIG-1-98試験に基づいて,レトロスペクティブに効果を比較した発表が行われたようです。


Rugo HS et al. 2008 Breast Cancer Symposium #141

背景
 閉経後ホルモン受容体陽性の初期乳がん患者を対象してタモキシフェンとアナストロゾールを比較したATAC試験,タモキシフェンとレトロゾールを比較したBIC 1-98試験で,どちらのアロマターゼ阻害薬がタモキシフェンより優れた効果を示すことが認められていますが,これらの薬剤の再発抑制効果を直接比較した成績はないため,ATAC試験とBIG 1-98試験の再発抑制効果のNNT(Number Needed to Treat)を求め,アナストロゾールとレトロゾールのNNTを比較した研究です。
注)NNT:1例の効果を確認するために何例必要かという指標。NNT=100÷効果の絶対差で表す。

方法:
 ATAC試験の2.5年後の再発抑制効果及びBIG 1-98試験の2年後の再発抑制効果をNNTで評価し,レトロスペクティブにアナストロゾールとレトロゾールの効果を比較する。

結果
・全再発
 アナストロゾールとタモキシフェンの比較(ATAC試験)におけるNNT:77(95%信頼区間39-2349)
 レトロゾールとタモキシフェンの比較(BIG 1-98試験)におけるNNT:75(95%信頼区間46-200)

 全再発に関しては,アナストロゾールとレトロゾールに差はない。

・遠隔再発
 アナストロゾールとタモキシフェンの比較(ATAC試験)におけるNNT:300(95%信頼区間74-8と記載されていますが,記載ミスと思われます)
 レトロゾールとタモキシフェンの比較(BIG 1-98試験)におけるNNT:100(95%信頼区間58-371) 

著者らの結論
 NNTは,ランダム化試験の幾つかの多くの成績を表現する簡単で検出力のある臨床的に意味のあるアプローチである。レトロゾールもアナストロゾールも閉経後初期乳がんの早期再発を予防するという観点で,タモキシフェンより優れている。局所再発,対側再発の抑制という点では,アナストロゾールに関連する臨床効果は,最初の2-3年で認められるが,レトロゾールは,局所再発,対側再発の抑制効果に加えて,遠隔再発抑制効果が顕著である。遠隔再発の抑制は,生存期間に影響する代替指標である可能性がある。

<コメント>
 アナストロゾールやレトロゾールは,選択的アロマターゼ阻害剤として,ホルモン受容体陽性の閉経後乳がん患者に優れた効果が示されています。
 どちらのアロマターゼ阻害薬が優れているのかということに関しては,種々議論があるようですが,レトロゾールは,アナストロゾール以上に乳がん患者の血漿硫酸エストロン値及びエストラジオール値を減少することが認められ,レトロゾールの方が血中エストロゲン抑制効果は優れていることが報告されています。しかし,臨床的には,これらの薬剤の効果に差があるのかどうかは不明です。
 今回は,NNTという指標をもちいて,これまで行われた第III相試験の結果をレトロスペクティブに比較した結果,全再発には,両薬剤に差は認められませんが,生存期間に影響する可能性のある遠隔再発抑制効果は,レトロゾールが優れていることが示唆されました。
 ATAC試験とBIG 1-98試験の結果からNNTを算出し,比較したレトロスペクティブ解析であり,直接比較ではありませんので,結論的に言うのは直接比較の結果で言うべきと思いますが,遠隔再発抑制効果は,レトロゾールが優れている可能性を示唆している結果になっています。
 最近,トラスツズマブとラパチニブ(商品名タイケルブ)の直接比較が始まったという情報がありますが,アナストロゾールとレトロゾールに関しても,遠隔再発,生存期間を直接比較することが必要になるのかも知れません。
注)読者の方より,アナストロゾールとレトロゾールの直接比較をするFACE試験が行われているとの情報を教えていただきました。結果を楽しみにしています。

 更に,どのような患者には,どの薬剤が投与すべきなのかを明らかにするために,効果予測因子に関する研究も必要になるのではないでしょうか。

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