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またも,抗がん剤の事故が起きてしまいました

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薬物療法の副作用対策
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 今日の朝日新聞に,岐阜県立多治見病院で食道がん脳転移の患者さんに通常の3倍の抗がん剤を投与し,白血球減少が認められ,死亡したという記事が掲載されています。
朝日新聞記事

 記事によりますと,2006年11月,食道がんの手術を受け,昨年脳転移再発が認められ,2007年12月17日〜2008年1月2日に2種類の抗がん剤が投与されたようなのですが,4週毎に投与すべきところを,その投与量で週1回,3週間投与したために,結果として通常量の3倍の抗がん剤が投与されたようです。
 抗がん剤の種類は不明ですが,ただでさえ白血球減少症の副作用が多い抗がん剤を通常の3倍を投与しているのですから,白血球減少がみられ,最終的に敗血症(?)のため死亡されたようです。

 この記事を読んで,埼玉医大の抗がん剤の事故を思い出しました。
 抗がん剤は致死的な副作用がありますので,使用するレジメンの用法・用量が適切であるかを何度もチェックする必要があります。
 記事によりますと,今回の事故は,「4週間に1回投与をするつもりでカルテに記入したが紛らわしい表現だったため,抗がん剤を調剤する薬剤部は4週間,毎週連続で1回ずつ投与と解釈し,医師も誤りに気付かなかった」と述べられています。
 医師の処方は,紛らわしい記載もありますし,間違っている場合もあると思います。その間違いや勘違いをチェックして,適切な用法・用量に訂正するのが薬剤師の仕事でもあると思います。
 今回の場合は,通常の3倍の抗がん剤を投与しているのですから,白血球減少だけでなく,他の副作用も出現していていると思われます。それらの副作用を適切にモニターしていれば,投与量の異常に気がつくはずですし,2回目,3回目の投与も回避され,致死的な事故にならずに済んだのではないでしょうか。
 昨日も,リスパダールの件でお伝えしましたように,薬剤を投与する場合には,リスクがある副作用を予測し,投与後は十分に患者を観察して,副作用が出現したときには適切に対処することが基本ですし,ましてや致死的な副作用が多い抗がん剤の場合には,厳密に用法・用量をチェックして,投与後には患者の状態を十分にモニターすることが必要になります。

 今回の事件は,医師の煩わしい処方の記載によって引き起こされた事故と思われますが,薬剤師のレジメン管理,用法・用量のチェック,化学療法の調整に加え,投与後に医師や看護師による患者の状態の観察,副作用モニターを適切に行っていれば,患者さんを死なすことはなかったと思います。
 食道がんの脳転移に対する有効性が確立された標準治療はまだないのですから,より一層慎重に投与すべきと思います。
 
 食道がんの脳転移例ですから,長い生存期間は期待できないのかも知れませんが,抗がん剤の副作用で患者の命を絶つということはあってはならないと思います。
 抗がん剤は,レジメン管理,用法・用量のチェック,安全が確保される調整,そして投与後の副作用モニター,対策が出来る施設だけで行うべきではないでしょうか。

 化学療法剤の調整だけでなく,抗がん剤の副作用から患者さんを守ることも薬剤師の仕事であると思います。
 もう,これ以上,このような事故が起きないよう心から祈っています。