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薬物療法の副作用対策は重要です

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その他の症状
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 昨年暮れ,毎日新聞に,精神的興奮がみられる脳神経疾患の患者に統合失調治療薬リスペリドン(商品名リスパダール)を投与したところ,一時的に昏睡状態に陥り,そのときに,副作用情報を患者側に十分に説明しなかったことを問題とする記事が掲載されています。
毎日新聞記事 

 リスペリドンは,ドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し,ハロペリドールと同様に強い抗精神病作用を示すとともに,錐体外路系の副作用が少ない抗精神病薬として開発されましたが,頻度は少ないものの多くの有害反応が認められていますし,重篤な副作用があることも知られています。
 ヤンセンファーマ社が提供する製品概要には,「本剤の投与により,高血糖や糖尿病の悪化があらわれ,糖尿病性ケトアシドーシス,糖尿病性昏睡に至ることがあるので,本剤投与中は,口渇,多飲,多尿,頻尿等の症状の発現に注意するとともに,特に糖尿病又はその既往歴あるいはその危険因子を有する患者については、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと」と記載され,「本剤の投与に際し、あらかじめこの副作用が発現する場合があることを,患者及びその家族に十分に説明し,口渇,多飲,多尿,頻尿等の異常に注意し,このような症状があらわれた場合には,直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう、指導すること」と記載されています。
リスペリドン:インタビューフォーム

 新聞紙上では,「リスペリドンは厚生労働省の指示で、副作用情報を患者側に十分説明する必要があるが、病院は怠っていた」と記載されていますが,精神的に興奮状態にある脳神経疾患の患者さんのようですので,説明してもご理解を頂けない可能性がありますし,ご家族への説明はタイムリーに出来ない可能性もあると思いますので,患者さんやご家族の説明は難しい面があったと思われます。
 それよりも問題と思われるのは,この患者が昏睡に陥っていますので,副作用のリスクがあるリスペリドンを投与しているにも関わらず口渇,多飲,多尿,頻尿等の症状などを十分に観察していないと考えられることです。

 リスペリドンは主にCYP2D6,一部CYP3Aにより代謝されることが知られていますので,パロキセチン(商品名パキシル)などのCYP2D6阻害薬やグレープフルーツジュースなどのCYP3A4阻害作用のある食品や薬剤によって代謝が阻害され,血中濃度が高くなり,副作用のリスクが増加する可能性もあります。
 また,アドレナリン,バルビツール誘導体など中枢神経抑制剤と相互作用を示すことがありますし,立ちくらみなどの起立性低血圧も出現する可能性もあることから降圧剤との併用は十分に注意することが必要です。

 リスペリドンは緩和ケアの分野でも使用される薬剤ですが,安易に使用するのではなく,副作用のリスクを十分に知った上で,患者・家族によく説明(説明文書をお渡しする)し,投与後は,十分な患者観察を行うことが必要と思います。

 リスペリドンだけでなく,どのような医薬品でも副作用は発現します。時に致死的な副作用を出現することがあります。ゲフィチニブ(商品名イレッサ)や経口フッ化ピリミジン製剤のような経口抗がん剤であっても,致死的な有害反応を起こすことが知られています。
 副作用のリスクを予測し,十分な検査や副作用のモニターを行えば,致死的な副作用は殆ど回避できます。
 副作用対策は,副作用のリスクをよく知り,副作用を予測して,十分な観察をして,出現したときには適切な対策を行うことが基本と思います。
 今回の一件は,十分な副作用対策の必要性を喚起しているものと思われます。
 質の高い薬物療法の提供には,十分な副作用対策が必要であることを再認識しました。 

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