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生存率のデータを正しく理解するために

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 最近,各医療機関の生存率を公開する風潮がありますが,12月21日の読売新聞に「がんの治療成績:高めに出やすい生存率」という記事が掲載されていました。
 生存率という統計指標を理解するためには,非常に参考になる記事と思いましたので,その記事の紹介し,合わせて,生存率に関して,理解すべき点について述べたいと思います。
読売新聞:特集

 がん治療における5年生存率は,がんと診断されて,治療を受けた方がどの程度5年後に生きているかという指標です。症例数が多く,全例が治療開始してから5年経過し,また消息不明などがなければ,5年生存率という指標は信頼できる指標となります。
 しかし,多くが5年を経過していない場合や消息不明が多い場合には,不確実な指標となります。
 読売新聞の記事では,神奈川県立がんセンターの岡本先生が,「消息判明率の理想は95%以上。90%未満では情報に誤差が大きく,患者を惑わす恐れがあり,公表すべきでない」と述べていますが,適切なコメントであると思います。

 生存率の計算は,多くの場合Kaplan-Meier法という方法を用いて計算します。その計算方法を簡単に示します。
 例えば,10例の対象患者で,1例目が1ヵ月目に死亡,2例目が2ヵ月後に死亡,3例目は3ヵ月生存を確認したが,現在追跡中で不明,4例目は4ヵ月後に死亡という場合には,1ヵ月生存率は(10-1)/10(90%),2ヵ月後は9例が対象となりますので,1〜2ヵ月の間の生存率は(9-1)/9となります。2ヵ月生存率は(9/10)×(8/9)=8/10(80%)になります。
 本来なら次の時点の計算の対象となる例は8例ですが,3ヵ月まで生存が確認され,それ以降は不明の場合には,計算から除外しますので7例中6例が生存していると計算し,4ヵ月生存率は(9/10)×(8/9)×(6/7)=0.685(68.5%)と計算されます。
 不明例がその時点で死亡している場合には,4ヵ月生存率は6/10(60.0%)ですし,生存していて十分に観察期間があれば4ヵ月生存率は7/10(70%)となります。
 Kaplan-Meier法での計算した4ヵ月生存率は68.5%ですが,その時点で死亡している場合には60%となるということになります。このように,解析対象が十分な期間の追跡をしていない場合には,生存率が高く出る可能性があります。

 臨床試験論文中には,生存曲線上に不明(cencored case)となった時点の例数をプロットすることも行われますし,また生存曲線の図のしたにリスク例として,その時点の計算の対象となった症例数を明記するものもあります。
 この場合,不明例のプロット数が多いデータや死亡数が少ないのにリスク例が減少しているような場合の生存率や50%生存期間は信頼できないことになります。
 
 このためにどの程度追跡しているかということを追跡期間(中央値)を示すことがあります。
 例えば,追跡期間(中央値)が60ヵ月で5年生存率を記載している論文では,50%の例は60ヵ月の追跡されていますが,50%は60ヵ月追跡されていないことを示します。すなわち,追跡期間(中央値)60ヵ月であれば,5年生存率は今後変わりうることになりますので,信頼できる指標にはなりません。
 中間解析結果で,大きな治療効果が認められた場合には,解析結果は変わることは少ないのですが,小さな差の場合には,信頼できないと考えた方が良さそうです。

 まとめますと,生存率を評価する場合には,まず最初にどのような症例(がん種,病期,治療法など)が対象になり,対象となった症例数,試験開始時期と解析時期,追跡期間はどの程度か,不明例はどの程度あるのか,効果指標には十分な追跡期間が行われているかなどを見極めることが必要になります。
 生存率に関しては,後になるに伴い対象症例数が少なくなりますので,誤差が大きく生じますので,追跡期間の最後の方の数値はあまり信用しない方が賢明と思います。