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乳がん患者のほてりに対する鍼治療の効果

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その他の症状
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 仲間に鍼灸師がいるためか,鍼灸を含めた中国医療に興味を持っており,個人的にも鍼灸治療を受けています。  Journal of Clinical Oncology誌の12月10日に乳がん患者の「ほてり」に対する鍼治療の効果を評価した比較試験結果が掲載されていましたので,紹介します。

 
Deng G et al. J Clin Oncol 2007;25:5584-5590

対象患者:
 1日に3回以上のほてり(潮紅)を認める乳がん患者でこの試験中に外科手術,放射線,化学療法などの治療を予定していない,または,ホルモン療法の開始・中止が予定されない72例(3週以内にSSRIなどの抗うつ剤を投与している患者や皮膚感染があるは除外)

方法:対象患者を次の2群にランダムに割り付け,6週後のほてり(潮紅)の頻度を比較。
鍼治療群(42例):セイリン社製(日本製)の鍼(0.20×30mm)を使用し,指定されたポイントに鍼を皮膚の0.25〜0.5インチを挿入し,週2回,4週間(計8回)鍼治療しています。
疑似鍼治療群(29例):Asiamed社製のStreitberger sham針を用いて,定められたツボから数センチ離して針を挿入するという疑似鍼治療を週2回,4週間(計8回)行っています。 最初に疑似鍼治療群に割り付けられた例は,7週目に本当の鍼治療を開始しています。 

結果
・「ほてり」の頻度の変化(平均値±標準偏差)
鍼治療群:
(治療前)8.7±3.9,(7日目)7.3±4.4,(14日目)6.9±4.8,(28日目)5.8±4.8,(35日目)5.9±4.7,(6週目)6.2±4.2
疑似鍼治療群:
(治療前)10.0±6.1,(7日目)7.9±5.0,(14日目)7.5±6.1,(28日目)7.8±5.9,(35日目)7.5±5.2,(6週目)7.6±5.7

 鍼治療群が「ほてり」の改善が良好である傾向を示していますが,両群間に有意差は認められていません(P=0.3)。   
 疑似鍼治療を受けた例で,7週目から本当の鍼治療を受けていますが,「ほてり」の頻度は,7週目7.3±5.5から12週目5.4±3.8と改善して,6ヵ月その効果は持続したようです。
 この結果から,鍼治療により乳がん関連の「ほてり」を回数を減らす可能性がありますが,疑似鍼治療と比較して統計学的に有意な改善とならなかったようです。 しかし,著者らは,より長期間,より集中的に鍼治療を行うことにより,「ほてり」の改善効果が得られる可能性があると結論しています。

 今回の比較試験の疑問点を列挙します。
①今回の試験では,ホルモン療法は新たに開始することや中止する例を除外していますが,ホルモン療法の内容を規定していません。「ほてり」の副作用が問題となるタモキシフェンは,鍼治療群20/48(48%),疑似鍼治療群10/30(33%)と鍼治療群が多く,アロマターゼ阻害剤は鍼治療群8/48(19%),疑似鍼治療群9/30(30%)となっていません。すなわち,鍼治療群がほてりの評価という意味では,不利な状況になっていると思います。このような不利な状況でも改善傾向を認めたということを考慮すべきと思います。
②今回の試験では,ほてりの回数を効果指標にしていますが,「ほてり」の重症度も評価すべきと思います。すなわち,鍼治療により「ほてり」による患者の苦悩が軽減するかどうかという点も重要と思われます。
③対照群の治療前の回数は10.0±6.1となっていますので,かなり回数がある例が数例含まれていそうです。この様な状況で,回数を比較することは少し疑問です。
④論文には,鍼灸師が診断をしたのかどうか記載されていません。鍼治療は西洋医学とは異なる診断を用いますので,西洋医学的な診断だけでなく,東洋医学的な診断結果も記載すべきと思います。

  このような疑問点があり,かつ症例数が少ない試験ですので,統計的有意差とはならないと思われますが,鍼治療により乳がんの「ほてり」を改善する可能性を示した興味ある臨床試験と言えると思います。
 タモキシフェンの「ほてり」を改善するためのパロキセチン(商品名パキシル)が使用することがありましたが,パロキセチンはタモキシフェンの代謝酵素であるCYP2D6を強力に阻害して活性代謝物であるエンドキシフェンの生成を阻害し,その結果,「ほてり」は軽減しますが,効果も減弱すると考えられています。
 鍼治療にはそのような薬物相互作用がありませんし,薬物療法の副作用もありませんので,もっと試みられても良いのではないかと思います。
 ですが,閉経前か閉経後か,治療内容,東洋医学的な診断結果,鍼治療の内容,ほてりの回数,NRSによる重症度を記録しておくことにより,将来的な解析が可能になると思います。
 今回の研究は,米国NCIが研究費をサポートしていますが,日本でも鍼治療を,代替医療とさげすむようなことをせずに,体系的に評価することが必要と思います。

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