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外来化学療法システムに関する研究から

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薬物療法の副作用対策
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 昨日,外来化学療法における,患者さんのご家族,ご自宅の抗がん剤の曝露の危険性をお伝えしましたが,Annals of Oncology誌の11月号に外来化学療法に関する興味ある研究結果が掲載されています。
 Annals of Oncology誌に関しては,現在,論文(Full paper)を読むことが出来ませんので,抄録からの情報となりますので,フリーアクセスサイトに掲載することにしました。

 一つは,携帯電話を利用したがん化学療法関連の有害反応の対応に関する研究です。
 化学療法の有害反応は,NCI-CTCAEver3などを使ってアセスメントするのが一般的ですが,外来化学療法の場合には,患者が外来受診したときにアセスメントするか,または患者への電話かFAXで確認しか方法がありません。
 この研究は,6例の結腸がん術後補助化学療法を受ける患者を対象に,携帯電話の画面から吐き気,嘔吐,口内炎,下痢,手足症候群など症状や体温を入力し,医療機関のコンピュータに送信し,それらの症状が中程度または重症であれば赤ランプや黄色のランプがつき,看護師がその患者に電話などで連絡して,対処方法などを伝えるという方法をとっています。
 今回の試みで,情報の遅延や伝達の問題も見られたようですが,それらはすぐに修正されて,患者が症状を訴えるときにすぐに対処できるようになったようです。
 この試みで患者さんの症状に関する正しい理解も増し,自分自身のケアに自分が参加する意識も増すなどが見られ,このアプローチに関して,患者さんも医療専門職も満足しているようです。
Weaver A. et al Ann Oncol 2007;18(11):1887-1892

 入院中であれば,問題ある有害反応が出現したらすぐに対処できますが,外来化学療法の場合には,有害反応が出現した場合の対処方法をお伝えしていると思いますが,患者さんだけですぐに対処することが難しいのではないかと思います。
 中程度や重症の有害反応があれば,すぐに看護師から患者さんに連絡をすることで,患者さんは落ち着いて対処が出来るようになると思われます。
 岡部医院は,在宅緩和ケアを行うに当たって,医療関係者同士が携帯電話を利用していますが,この場合には,患者さんと医療機関のコンピュータとつないで,有害反応対策を行うという画期的な方法ではないかと思います。日本でも試みられているのかもしれませんが,このように患者さんを安心させるシステムも必要と思います。

 もう一つは,外来化学療法を行っている患者の倦怠感と精神・心理的な問題に関する研究報告です。
 大腸がん,婦人科がん,泌尿器がん,悪性黒色腫などの外来患者2867例を対象に,European Organization for Research on the Treatment of Cancer(EORTC,欧州がん研究治療機関)の倦怠感に関する質問票とHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)質問票を使用して不安,抑うつなどの精神・心理症状を調べ,倦怠感と精神・心理症状との関係などを調べています。
 これらの対象患者の32%に倦怠感を訴え,倦怠感に関連する項目は,原発部位,まだ病巣がある,がん治療のタイプ,心理的な苦悩であることが示されています。
 心理的な苦悩は,倦怠感と最も強く関連が認められているようですが,倦怠感を示す例の半数は心理的な苦悩がないことも占められています。
Storey DJ et al Ann Oncol  2007;18(11):1861-1869

 がん化学療法による倦怠感には,幾つかの原因があると思います。原因が明確であればそれに対する対処を行うことが必要と思います。
 がん化学療法による倦怠感は,運動療法,気分転換,心理的カウンセリングにより改善することが報告されています。心理的な苦悩を軽減することにより倦怠感が改善することは間違いないようです。
 倦怠感があれば,闘病を行う気力も減少する可能性がありますので,外来化学療法を行う患者に対しても心理的ケアが必要ではないでしょうか。

 外来化学療法を行うにあたっては,患者さんを安心させるための,携帯電話などを利用した計画的な有害反応対策,心理的ケアが必要であることが必要であると思います。
 そして,抗がん剤によるご家族やご自宅の汚染を回避することで,よりよい外来化学療法のシステムが構築されると思いますが,皆様はいかがお考えでしょうか。