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健康的な食事と運動の効果

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 がん患者さんにとって,正しい情報に基づく日常生活様式を考え直すことは,治療がうまく終了することや,治療による体力の消耗からの回復や長期間にわたる治療効果を向上させるうえで大変重要です。
 最近,米国医師会雑誌(JAMA)に,乳がんのサバイバーの長期の試験で推奨されている1日5種類以上の野菜や果物を食べることが乳がんの再発や死亡に影響がないことが示されています。
Pierce JP et al. JAMA 2007;298:289-298

 この試験は,the Women’s Healthy Eating and Living (女性の健康的な食事と生活,WHEL) 試験と呼ばれるもので,カリフォルニア大学などの研究チームによって行われました。18-70歳でI〜III期の乳がん治療を受けた3000名以上の婦人(閉経前または閉経後)がこの試験に参加しています。これらの婦人を,2群に無作為に割り付けました。一つの群は,毎日5種類以上の果物や野菜,20g以上の食物繊維,そして脂肪からのカロリー摂取を30%以上少なくした食物を食べることを勧めた「5-A-Day Program」という米国の食事のガイドラインのパンフレットを渡し,そのパンフレットに従うように勧められた対照群(1551名)です。もう一つの群は,1日5種類の野菜,3種類の果物,16オンスの野菜ジュース,30gの食物繊維や総カロリーの15-20%に脂肪をカットした専門家が作成した食事計画に従い,その計画からはずれないように定期的に電話相談,料理教室や手紙を出すという方法を行う介入群(1537名)です。
 介入群では,対照群に比較して,4年後には,野菜65%,果物25%,食物繊維30%,脂肪からのエネルギー摂取-13%と有意差を認めていましたが,その後,その差は小さくなり,7年後の再発率や死亡率に差がないことが明らかになりました。
 この試験では,介入群の婦人の体重がやや増加していることが認められています。その理由は,介入群の婦人は,平均して,脂肪からのカロリー摂取が15〜20%だけという目標に到達せず,6年後では,研究開始時と比較して,脂肪の割合がより高い食事をしていることが考えられています。

 この試験と同じようなWomen’s Intervention Nutrition Study (女性の栄養に関する介入試験,WINS)と呼ばれる試験では,低脂肪食を取った乳がん治療経験者の再発率が少ないことが認められています。
Chlebowski RT J Natl Cancer Inst 2006;98:1767-1776

 この試験では,48〜79歳のI〜III期の乳がん治療を受けた婦人を対象に,栄養士などが関与して計画的に食事指導した群(介入群,975名)と最低限の食事指導を受けるだけの対照群(1462名)で,栄養の摂取状況や体重などの身体測定変数を調べています。
 1日の脂肪からのカロリー摂取は,対照群では,研究開始前29.6%で1年後29.2%とあまり変化していませんが,介入群では,29.6%から20.3%と減少し,1年後に有意差を認めています。体重は,対照群では研究開始前平均72.6kgが1年後平均72.8kgとやや増加していますが,介入群では,開始前の平均72.7kgが1年後に平均70.6kgと減少することが認められています。再発は介入群975名中96名(9.8%),対照群1462名中181名(12.4%)と有意差を認めています(ハザード比0.76,P=0.034)。すなわち,介入群は,再発リスクが24%低下することを意味します。特に,エストロゲン受容体陰性例で,その傾向は顕著です。

 このように食事指導の介入で,脂肪の摂取量が減少する結果,体重が減少して,乳がんの再発を抑制することが推定できたわけです。
 これらの二つの試験は,結果が相反するように見えますが,前者のWHEL試験では体重がやや増加し,WINS試験では体重が減少する結果になっていることが両試験の大きな違いかも知れません。後者のWINS試験では,脂肪の摂取量を制限した食事を行って体重が減少したことで,再発が抑えられたとも考えることが出来ます。また,前者のWHEL試験では,「5-A-Day Program」という毎日5種類の野菜や果物の摂取を勧める米国の食事のガイドラインのパンフレットを渡すだけの食事指導でもある程度の効果を示すためか,特別な食事指導を行う介入群と比較して,再発率に差が認められていないのかも知れません。
 また,二つの研究の対象となる婦人の年齢層は,前者では,18〜70歳,後者では48〜79歳でありますので,年齢層の違いも,これら二つの研究成果が異なることに関連しているのかも知れません。
 もう一つ,乳がん治療を経験した70歳未満の婦人1490名を対象として,運動などの身体活動性,食事と肥満との生存期間の関連を調べた試験があります。
Pierce JP et al J Clin Oncol 2007;25:2345-2351

 この試験では,毎日5種類以上の野菜と果物を摂取して,1日30分のウォーキングに相当する運動を週6回している婦人の生存期間が統計的に有意に良好であることが示されています(ハザード比0.56,95%信頼区間0.31-0.98)。この傾向は肥満であっても,なくても認められています。そして,この効果は,エストロゲン受容体陽性乳がんというホルモン療法が効きやすい乳がんを有した婦人で強く認められています。

 これらの三つの試験は食事と運動の重要性を示した意義のあるものと思います。
 これらの論文をまとめて考えますと,1日5種類以上の野菜や果物を摂取するだけでなく,低脂肪食を摂取することと毎日1日30分のウォーキングに相当する運動をすることにより体重増加を防ぐことの総合的な,乳がんの再発を抑制する可能性があると言えるのではないでしょうか。
 また,結腸がんと診断された後の身体活動(運動)と生存期間の関係についても報告があります。
がん治療は,適切な運動や食事が基本

 その報告以外にも,転移がないI期〜III期の大腸がん573例の検討で,ウオーキング,ジョギング,バイク,水泳,エアロビクス,ヨガ,ストレッチなどの運動のレベルが増加すると死亡率が低下することが認められています。
 さらに,抗がん剤による倦怠感や進行期の倦怠感は,適切な運動で改善しますし,運動をすることで,筋力が衰えることもなく,消化管の運動も改善することも知られています。

 がん医療を上手く受けるためには,健康的な食事と運動が重要であることをご理解いただければ幸いです。

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