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がんの痛みPart9:モルヒネが効きにくい痛み

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緩和ケア
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 これまで,モルヒネなどのオピオイドを中心とするがんの痛みの治療について,お伝えしましたが,モルヒネが効きにくい痛みもあります。
 しかし,簡単に「モルヒネは効果がない」と判断する前に,もう一度,痛みの性質などを確かめ,適切な治療をしているのかを考える必要があります。

㈰ モルヒネなどのオピオイドの投与量は適切ですか?
 痛みが和らぐような適切な投与量を決めてから投与を続けなければ,モルヒネの効果があるかどうかわかりません。適切な投与量の決め方の一つの方法については「がんの痛みPart8」でお伝えしましたので参考にしてみて下さい。

㈪ アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を一緒に使っていますか?
 がんの痛みは色々な原因があり,その一つにがんによる炎症があります。炎症がある痛みはNSAIDを一緒に服用する方が効果的であると思います。非ステロイド性抗炎症薬を服用していなければ,そのことを医師に尋ねてみてください。

㈫ 血中モルヒネ濃度が低下する病態がありませんか?
 腹水や胸水,または浮腫がある場合には,モルヒネが腹水や胸水,または浮腫に移行するために血中のモルヒネ濃度が低下する場合があります。そのような時には,モルヒネの投与量が十分ではなくなる可能性もあります。腹水や胸水がある場合には投与量を少し増やすことも必要かも知れませんが,腹水や胸水がなくなった時には増やした投与量を元に戻すことが必要になります。

 モルヒネが効きにくい痛みには次のようなものがあります。

がんや他の原因で消化管閉塞がある患者さんには,持続的な痛みと周期的・発作的に激しい痛みを感じる疝痛(せんつう)があります。疝痛は閉塞された場所からの腸の動きが活発になる時に起こり(下痢の時のような激しい痛み),お腹がグルグルなるようなグル音が聞こえます。この疝痛はモルヒネが効きにくいと言われ,抗コリン剤であるブチルスコパラミン(商品ブスコパン)が効果的と考えられます。

寝たきりになったための全身衰弱による筋肉痛や関節痛などに関連する痛みには,モルヒネなどのオピオイドよりも,筋弛緩薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が効果的と考えられています。

乳がん,前立腺がん,肺がん患者さんは骨転移がみられる場合がありますが,骨転移による骨痛には,放射線治療が効果的であることが世界的に知られています。
 薬物療法ではビスホスフォネート製剤であるパミドロネート(商品名アレディア)やゾレドロネート(商品名ゾメタ)が,効果があることが知られています。虫歯などの治療が必要な方は,ビスフォスホネート製剤を使用する前に虫歯の治療を終了しておくことをお勧めします。

がんやがんによる炎症が神経を圧迫して痛みを示すことがあります。この場合には,ステロイド製剤や抗けいれん薬が,効果があるかも知れません。

「鋭い」「刺すような」「ビリビリした」と表現される発作性の痛みは,神経障害性疼痛の一つと考えられますので,モルヒネなどのオピオイドに加えてガバペンチン(商品名ガバペン)やカルバマゼピン(商品名テグレトール)などの抗けいれん薬を服用すると効果があるかもしれません。抗けいれん薬は相性が悪い薬がありますので,抗けいれん薬を服用する時には,どの薬剤と相性が悪いのか,薬剤師の方にお尋ね下さい。

「しびれ」「しめつけ」「つっぱり感」「チリチリ痛む」などの持続的な異常感覚の痛みも神経障害性疼痛の一つと考えられます。この場合には,アミトリプチン(商品名トリプタノール)などの抗うつ薬をモルヒネなどのオピオイドに併用することが多いと思います。どうして,「うつ」でもないのに抗うつ薬をと思われるかも知れませんが,神経の情報伝達が異常になっているためにそれを改善させるために抗うつ薬を併用することと抗うつ薬と併用するとモルヒネの効果が強まると考えられていることが併用する理由になります。

 モルヒネが効きにくい痛みに対しては,麻酔科の医師が行う神経ブロックもありますし,他の薬物療法もありますので,どうしても痛みが取れないという場合には,麻酔科やペインクリニックなどに相談すると良いと思います。

 今回お伝えした内容は,一般的に行われるもので,病院によっては異なる方法を行う場合もあります。
 しかし,㈰痛みの部位,性質,強さなどを把握して,その患者さんに適した薬物を選択し,㈪患者さんの痛みが緩和され,命にかかわる副作用が出ないようにモルヒネなどのオピオイドの投与量を患者さん毎に決めていくことは共通です。
 言い換えますと,患者さんが痛みの部位,性質,強さなどを医師や看護師に伝えられなければ適切ながん疼痛治療を提供できません。
 これらを全く行わず,貼り薬を貼るだけでは,適切ながん疼痛治療になりません。

 また,モルヒネなどの鎮痛薬を服用した後の痛みの状況や便秘,吐き気などの状況も適切ながん疼痛治療の重要な情報となることをご理解いただければと思います。

 がんの痛みは我慢しないで下さい。