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がんの痛みPart8:鎮痛薬の投与方法

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緩和ケア
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 これまでもお伝えしましたようにWHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法では,患者さんの痛みの状況に合わせて鎮痛作用の弱い順にアセトアミノフェンまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID),弱オピオイド(コデインなどの弱いオピオイド),そして強オピオイド(モルヒネ製剤,オキシココドン)を使用することが原則になります。
注:WHO方式がん疼痛治療法は,通称,WHOの三段階ラダーと言いますが,ラダーははしごという意味で,痛みの程度や鎮痛薬の効力に従って,一段ずつあがることを意味します。

 患者さんの痛みの状況をよくアセスメントせずに,始めから比較的投与量の多いモルヒネ製剤などのオピオイドを服用すると,強い吐き気などの副作用のために,服用が続けられないことがありますので,オピオイドは,痛みの状況に合わせて少量から服用して,効果がなければ増量またはより強い効果のある薬剤に変更する方法が一般的です。
 例えば,リン酸コデインを1回20mgから副作用を開始すると仮定しますと,モルヒネの3.3mgに相当する少ない投与量から服用を開始することになります。痛みが強い場合には,モルヒネ製剤を1回5〜10mgから服用開始することもあります。

 リン酸コデインから服用を開始して,患者さんにあう投与量を設定する方法についてお伝えしたいと思います。他の薬を使用する場合でもこの原則は変わりませんので,考え方をご理解いただければと思います。
 リン酸コデインやモルヒネの速放製剤は,服用してから30〜1時間で効果が見られ始めます,30分から1時間で鎮痛効果が見られない場合には,投与量が少ない可能性がありますので,その場合には,同じ量をもう一度服用することを繰り返しながら,患者さんにあう投与量を見つける方法です。

㈰ リン酸コデイン20mg錠1錠内服します。
㈪ 30分〜1時間後,効果がある場合には,この投与量が適切ですので,リン酸コデイン20mgを6時間毎1日4回内服(リン酸コデイン1日80mg投与=モルヒネ換算13.3mg)に決め,そのスケジュールで投与を継続します。
㈫ 30分〜1時間後,効果がない場合には,投与量が足りませんので,その時点でリン酸コデイン20mgを1錠追加して服用してください。
㈬ 追加服用30分〜1時間後に効果がある場合には,この投与量が適切と考えられますのでリン酸コデイン20mgを4時間毎1日6回内服(リン酸コデイン1日120mg投与=モルヒネ換算20mg)に決め,この投与量で継続します
㈭ 追加服用30分〜1時間後でも効果がない場合には,リン酸コデイン20mg をもう一度追加服用してください。
㈮ 2回目の追加服用30分〜1時間後に効果がある場合には,リン酸コデイン40mgを4時間毎1日6回内服(リン酸コデイン1日240mg投与=モルヒネ換算40mg)に決め,そのスケジュールを継続投与してください。
㈯ 2回目の追加服用30分〜1時間後に効果がない場合には,1〜2時間後にモルヒネ10mgを服用してください。
㉀ モルヒネ服用30分〜1時間後に効果がある場合には,モルヒネ10mgの4時間毎1日6回服用(モルヒネ1日60mg)を適切な投与量と決め,継続的に投与してください。

 多くの場合には,これらの段階で適切な量が設定できると思いますが,痛みが強い場合には,モルヒネ1回5mgや10mgから開始する場合もあります。
 オキシコドンの速放製剤であるオキノーム散もモルヒネと同じように少ない量から投与を開始することになりますが,オキシコドンの徐放製剤であるオキシコンチンは,12時間効果が持続する持続製剤ですので,上記のようなスケジュールでは適切量を決めることはできません。
 なお,効力から見ると,リン酸コデイン180mgはモルヒネ30mg(モルヒネの効力が6倍強い)に相当し, モルヒネ30mgはオキシコンチン20mg(オキシコンチンの効力が1.5倍強い) に相当することを覚えておいた方が良いと思います。

 しかし,初めからフェンタニルパッチ(商品名デュロテップパッチ)を投与することは適切ではないと米国FDAから警告が出されていますので,最初からフェンタニルパッチを処方される場合には,医師にその理由をおたずねになると良いと思います

<臨時追加投与(レスキュー)> 
 患者さんに適切な投与量を決め投与を継続しても,痛みが急に出現したり,新たな痛みが出ることがあります。その場合には,痛みを我慢するのではなく,1日投与量の1/6量を1回投与量として,臨時追加投与します。このことをレスキューといいます。
 例えば,モルヒネを1日60mgが適切な量である場合には,1回のレスキューは10mgになります。レスキューの服用が多くなりますと,前に決めた適切量では不足になっている可能性がありますので,新たに適切量を決める必要があります。
 その場合にはレスキューで投与した投与総量と一定時間毎に投与した1回投与量を合算した量を1日投与量と決め,その量を速放性剤であれば,1日投与量の1/6(12時間持続製剤であれば1/2,24時間持続製剤であれば1日投与量)を1回投与量として,4時間毎(12時間持続製剤であれば12時間毎,24時間持続製剤であれば24時間毎)服用します。

<副作用対策>
 モルヒネなどのオピオイドの投与により,便秘,吐き気,眠気の副作用がみられますので,緩下剤や制吐剤などの予防投与が必要になるになります。

 便秘に対しては,緩下剤である排便刺激剤(センナなど)と便軟化剤(ラクチロースなど)の両方を使用することが望ましいと考えられています。少なくとも2〜3日毎に腸運動が増加することを確かめることが必要になります。また,がん患者の方は食欲不振,早期満腹感や慢性的な吐き気があり,必要となる水量を摂取することができない方もおりますので,かさのある緩下剤を避け,正常な活動や良好な水分摂取が必要になります。

 吐き気が強ければ,モルヒネなどの服用が難しくなることもありますので,予防的な制吐剤投与が勧められるます。吐き気は通常1〜2週でおさまる可能性が高く,その間を目処にナウゼリンやノバミンなどの制吐剤を投与することが勧められます。制吐剤の効果がなければ,吐き気を訴える状況を確認し,制吐剤を変更する,または,他のオピオイドに変更または減量することになります。

 モルヒネの服用で瞳孔が小さくなる縮瞳や傾眠は,過量投与を示す可能性があるため,それらの徴候が認められたらモルヒネの増量を行わないことが望ましく,眠気が強い時や1〜2週をすぎても見られるときには,痛みがなければ,モルヒネの減量または他のオピオイドへの変更を考慮することになります。
 モルヒネなどのオピオイドは過量投与になると呼吸回数が減る呼吸抑制の副作用がありますので,過量投与には注意が必要です。

 脱水や腎機能が悪くなった場合,長期に服用した場合には,モルヒネの代謝物が体内に蓄積し,傾眠などの精神症状などが見られることがありますので,そのような場合には,オピオイドの減量または他のオピオイドへの変更が必要になることがあります。

 このようにがんの痛みの状況に合わせて,最適なモルヒネなどの鎮痛薬の投与量を決めて,痛みが強く出現したときの対処や便秘や吐き気の副作用対策を適切に行えば,安全に痛みを緩和出来ることをご理解いただきたいと思います。