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がんの痛みPart6:がんの痛みの治療

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緩和ケア
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 これまで,がんの痛みの性質やアセスメントについてお伝えしましたが,今日は痛みの治療についてお伝えしようと思います。
<痛みの治療の目標>
 がんの痛みの治療は,次のことを目標としています。

㈰ 痛みが強ければ,痛くて眠られないまた眠っても痛くて目が覚めることがありますが,痛みを和らげて睡眠が妨げられないような状態にすることが第1目標になります。

㈪ その次は,静かにしていれば痛みが消えている状態,言い換えますと,テレビを見て笑うこともでき,クシャミや咳をしてもわずかな痛みを感じる程度にすることが目標となります。

㈫ 最終的には,起きあがったり,体を動かしたりしも痛みが消えている状態,言い換えますと,痛みが消え,他の症状がなければ,普通の社会生活ができる状態にすることが目標となります。

 がんの痛みの治療は,昨日お伝えした痛みのアセスメントに基づいて行われますが, WHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法が世界的に基本であることが知られています。すなわち,痛みの強さに応じて投与する鎮痛薬を3段階で決める方法で治療を開始します。

<WHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法>
㈰軽度の痛みであれば,モルヒネなどのオピオイドではない非ステロイド性抗炎症鎮痛剤(NSAID,エヌセイドと呼びます)やアセトアミノフェンの投与を開始します(第1段階)。

㈪中等度の痛みやNSAIDやアセトアミノフェンでも効果が見られなくなったらリン酸コデインなどの弱いオピオイドまたは少ない投与量のモルヒネを投与します(小量のモルヒネ製剤やオキシコドン製剤が使用されることもあります)(第2段階)

㈫痛みが強い場合や第2段階の鎮痛薬投与でも効果が見られない場合には,モルヒネなどのオピオイド(モルヒネ製剤,オキシコドン製剤,時にフェンタニルパッチ)を投与します(第3段階)。

<痛み治療の5原則>
 WHOでは痛みの治療の原則を次の5つをあげています。

1)可能な限り経口投与する
 患者さんのQOLを考慮して,器具の使用なしに,できる限り簡単な投与経路,どこでも継続的なで鎮痛剤を投与できることから,口から服用する経口投与が基本になると考えられます。しかし,強い悪心・嘔吐,嚥下困難,消化管閉塞などによる通過障害,消化管の吸収能力が低下している場合には,座薬,貼り薬がありますし,経口投与,坐薬が不可能なときには,皮下注射や静脈内注射があります。
 また,痛みが強い場合には,モルヒネ1mg程度の静脈注射で早く痛みを取りながら,適切な投与量を決めて,必要な量を経口投与することがあります。

2)時刻を決めて規則通りに正しく使用する
 鎮痛剤は投与してから効果を発現し始めるまでに,製剤や剤型により異なりますが30分〜2時間かかります。
 また,鎮痛剤が体内から排泄されると再び痛みを感じはじめます。持続的に鎮痛剤の効果を発揮させるために,投与する鎮痛剤の性質(4時間毎に投与する製剤か,12時間毎に投与する製剤か,24時間毎に投与する製剤か,3日毎に張り替える貼り剤か)を考慮して,時刻を決め規則通りに投与する定時投与が必要となります。

3) WHO方式がん疼痛治療法に沿って効力の順に薬剤を選択する
 WHOでは,鎮痛作用の弱い薬剤から始め,効果がなければ強い薬剤に変更することを勧めています。
 すなわち,痛み治療導入時の至適量の設定の段階で患者さんの痛みが,アセトアミノフェンなどのNSAIDやリン酸コデインまたはより強いオピオイドのいずれかが必要か推定できます。
 痛みが強いと考えて,いきなり比較的高用量のモルヒネ持続製剤(効果が長時間持続する)を使用して,吐き気などの副作用で苦しむ患者さんもいますので,そのようなことを回避するため,痛みの強さに関係なく,アセトアミノフェンなどのNSAIDから投与を開始することを勧めています。

4) 患者ごとに個別的な投与量を決定し投与する
 鎮痛剤,特にモルヒネなどのオピオイドに対する患者さんの感受性には個体差があると知られています。
 副作用が最小限に抑えられて,鎮痛効果を発現する至適量を設定する必要があります。患者さんにとっての至適量を設定するためには,4時間毎に投与する製剤の服用を繰り返し,除痛に必要な投与量を求め,投与と効果・副作用の確認を繰り返しながら調整することが必要になります。このことをtitration(タイトレーション)と言います。

5) その上で,服用に際して細かい配慮を行う
 一つの痛みが軽減されても他の痛みが増強したり,新たな痛みが発生したりすることがあります。それらの痛みが同じ機序で起きているとは限りません。また,痛みが増強している場合には,鎮痛剤の増量や鎮痛剤の効果を高める鎮痛補助薬の投与が必要になる場合もあります。
 従って,痛みが増強したり,新たな痛みが発生した場合には,痛みの原因や性質をはじめからアセスメントし,強い痛みから対応することが必要になります。

 また,腎機能異常や著しい肝機能異常には,鎮痛剤の代謝や排泄が異常となるため,副作用が発現しやすい状態になります。
 一方,浮腫や胸腹水がある場合には,それらがない場合に比べ,血中濃度が低くなり,効果発現が得られにくくなることがありますので,その場合には,増量する必要もあります。  

 がんの痛みの治療は,患者さんに適切と思われる投与量を決めて,必要量を定期的に投与することが基本です。痛みが強くなったり,また副作用が出るようになったら投与量を変更したり,他の薬剤に変更したりします。
 この方法でがんの痛みの多くは緩和できると思います。