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安全性を考える

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 ゴールデンウィーク中に千里万博公園の遊園地「エキスポランド」で,ジェットコースター「風神雷神II」が脱線し,若い女性が死亡,19人が重軽傷を負う事故がありました。今回の事故は,車軸の一部が破断し,車輪が脱落したようで,15年も部品が交換されていなかったようです。
「エキスポランド」は,金属疲労の検査を1度もしていなかったようですが,ジェットコースターなどの衝撃は想像以上のものと思いますが,その認識がない会社側の態度は批判されても仕方がないと思います。
 全国のテーマパークは経営的に厳しい状況であるとのことですので,効率的に収益を上げるために,安全確認,部品交換というコストのかかることを避ける傾向があるのかもしれません。記者会見の様子を見ても,「法的には規制がない」という無責任と思われる会社側の説明がありましたが,人の命より会社の業績を優先している発言のような印象があり,とても許されることではないと思ってしまいました。ご自分の娘さんが同じような事故で亡くなったら,どう思うのでしょうか?
 しかし,安全性に関しては,私たちの問題としても考えておくことが必要なのではないかと思います。
 このような事故が起きたときには,多くの人たちがコストより安全性を問題にしますが,事故がないときには,安価なもの,便利なもの,楽しいものを求める傾向があります。
 例えば,安価な野菜を求める消費者に応えるために,効率的に野菜を生産しようとします。そのために,農薬を多く使うことになります。農薬を多く使えば,土壌も農薬に汚染されて,結局は環境破壊をもたらすこともあります。

 医療機関でも,経営が厳しくなると,医師,看護師,薬剤師を法定で定められた要員数ぎりぎり,またはそれよりも少ない要員数で運営することもあります。そのために,スタッフは過剰労働を強いられ,患者さんのケアに時間を取りたくても,日常の業務をこなすだけで精一杯となり,患者さんに十分なケアをする時間がなくなることがあります。これでは,安全に医療を提供するということは難しいのかも知れません。患者さんの安全性を保証するには,マニュアルなどの整備,教育も必要なのですが,スタッフの余裕を確保することが最も大事なことと思います。
 効率的な経営を求めすぎると,結局は安全性を損ねることもあることを理解しなければならないと思います。

 医薬品は,有害反応という副作用がつきものの製品ですので,安全性をよく考えなければ,効果的な薬物療法は不可能となります。しかし,医療専門職も患者さんの中にも,新たな効果だけに注目して,新しい薬剤に飛びつく傾向もあります。安易に飛びついたために,それまでに予測できなかった副作用が出現したために社会問題となったこともあります。イレッサの間質性肺炎,タミフルの異常行動もその例ではないかと思います。これらの薬剤とも優れた医薬品ですが,安全性に対する配慮が足りなかったために,このような問題を引き起こしたのではないかと思われます。
 このようなことは,投与を受ける患者さんの状況と医薬品の安全性を十分に吟味していれば,多くは回避できはずです。有効性だけを期待しすぎて,安全性を度外視したために起きた事故とも言えます。
 医薬品の場合には,人種によって反応性が異なることもありますので,欧米で安全性がある程度評価されたとしても,日本人では安全とは言えない場合もあります。最近,抗がん剤の早期承認の要望が強いために,欧米で評価された抗がん剤を,日本でも簡単な試験だけで承認することが行われていますが,その簡単な試験で安全性が評価されたとはとても言えない状況であることを理解しなければなりません。例えば,0.1%の致死的な副作用を確認するためには,3000名で確かめなければならないと考えられていますので,20〜30名の検討では安全とは結論できないのです。
 患者さんの要望に応えるために早期承認を図る臨床試験や承認のシステムを改良することは必要と思いますが,日本人に対する安全性に関するデータが不足している状態で早期承認することには,同じことを繰り返すのではないかと心配があります。早期承認にはそういうリスクがあることを理解しなければなりませんし,副作用が出現したときに,厚生労働省や製薬企業には安全性評価の責任はありますが,厚生労働省や製薬企業だけの責任にすることは必ずしも正しいとは言えないのかも知れません。

 食,乗り物,医薬品などの安全性を確保するということは,基本的な問題であると思います。そのためには,直接的なコストもかかりますし,時間という間接的なコストもかかることを理解しなければならないように思います。
 事故が起きてから,安全性を考えることは遅すぎると思いますので,常日頃から安全性を確保するために,何をしなければならないのか考えていきたいと思っています。

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