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今年を振り返って

カテゴリ : 
がん医療総論
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[更新日:2011年12月28日]
 今年も色々ありましたが,この1年を振り返ってみたいと思います。


1. 大震災
 3月11日午後2時46分に宮城県沖で発生したM9という巨大地震とそれによる大津波と福島原発の爆発事故による複合震災です。これまで経験したことがない震度6強の揺れが比較的長く続き,ご存知のように大津波で太平洋側の海岸の町は壊滅状態となりました。
弊研究所がある宮城県南部の大河原町は,幸い大きな被害がありませんでした。しかし,すぐに停電となりましたので,大津波の被害や福島原発事故の詳しい情報を知ることが出来ませんでした。
翌3月12日に京都のセミナーのために,空路で関西地区に移動する予定にしていましたが,仙台空港も東北新幹線も壊滅状態であることがわかり,京都に行くことを断念しました。
停電で,携帯電話もつながらない状態でしたが,E-モバイルでインターネットにつなぎ,パソコンの残りの電源を使って,セミナー参加予定の方々に欠席の連絡をしました。セミナー参加予定の方々にご迷惑をおかけしましたが,皆さんに連絡することが出来ましたので,最小限の迷惑で済みました。
停電が解消されてから,津波の被害や福島原発事故を知ることが出来ました。また,仲間の一人が津波の犠牲になったこと,友人の実家などが津波に流されたことも知らされました。
大きな被害があったものの,自衛隊の方々,米軍の方々のご努力や全国の方々の暖かい支援もあり,被災された方々は,避難所生活から仮設住宅の生活となってきて,物不足も解消し,現在では,近くのスーパーマーケットやコンビニで何でも買えるような状態になりました。見かけは穏やかな感じに戻ってきましたが,医療や社会福祉のインフラはまだまだ復旧していませんし,被害にあわれた方々は,将来の不安を感じながら生活していると思います。
医療や社会福祉の基本概念は,病気や経済的な事情などで社会的に立場が良くなった方々を支える活動であると思います。そのためには,その方々を慈しみ,支え合いながらともに生きることと思います。今こそ,本当の意味の政治の力や行政の力が必要と思うのですが,報道されている政治,行政などの姿勢をみますと,そのような姿勢が感じられず残念で仕方がありません。

2. 蔵王・がん薬物療法シンポジウム 
薬剤師のためのがん薬物療法のシンポジウムの開催を今年4月に予定していましたが,震災後の交通機関の復旧には時間がかかると予想されたために,開催を9月18-19日に順延しました。
参加予定だった方の約30名がキャンセルされましたが,約50名の薬剤師の方が参加しました。
このシンポジウムは,若い臨床薬剤師が自分たちの手で企画して,自分たちでプレゼンテーションを行い,忌憚のない議論をすることによって,自分たちがどのように成長しなければならないかを感じていただくことを目的としていました。
といっても,若い薬剤師の方々は,その目的を理解して,シンポジウムに参加できるか心配していました。しかし,こちらの心配は無用でした。
プレゼンテーションをして下さった方は,交通費も自腹でしたが,日常の業務が多忙のなか,睡眠時間を削ってスライドを作成して下さいました。科学的にも非常に良いプレゼンテーションでした。そして,参加した薬剤師による忌憚のない議論,アドバイザーの医師,看護師の暖かみのあるコメント,そして,グループ討論が行われ,参加された薬剤師の方々が一体になった素晴らしいシンポジウムにすることが出来ました。
次に集まるときには,「もっともっと成長して集まろう。どれだけ成長したかみてもらいたい。」という頼もしいコメントがありました。
また,アドバイザーの先生方からも,「グループでの討論結果も良くまとめられていて能力の高さに感心しました」,「全国の薬剤師のモチベーションの高さを心強く感じました。この中から医療文化を変えるコアメンバーが全国にたくさん育ってほしいと心から思います」,「科学的かつ、人間性のある素敵なグループであると思いました」とのコメントも頂きました。
シンポジウムを企画したものとしては,この上のない喜びでした。シンポジウムに参加した,若い薬剤師の方が,より一層成長して,薬剤師のリーダーとして活躍していただければ,至上の喜びです。
次回は,2013年4月,桜の季節(大河原は一目千本桜という桜の名所)の行う予定です。皆さんの成長ぶりを楽しみにしたいと思います。

3. 今後のがん薬物療法について 
 今年も多くのがん薬物療法の臨床試験結果が報告され,日本でも多くの薬剤が承認されました。しかし,薬物療法の反応性には,人種差があることが明らかになり始めたのにもかかわらず,日本で適切な臨床試験を行わず,海外の臨床試験結果で承認するという「公知申請」が慣例化するような印象があります。
欧米で使用できる薬剤が日本では使用できない,承認が遅いというドラッグラグの問題を解決しなければならないことは確かなのですが,未承認薬をそのまま公知申請するだけというのが慣例化すると,日本ではがん薬物療法の臨床試験が行われなくなるという危惧があります。
日本で臨床試験を行わなければ,「公知申請」だけで,日本人には効果が少ない高薬価の薬剤を承認する可能性があると思います。もしそうなれば,潤うのは製薬企業やそれに関連する方々だけで,医療費の無駄遣いになってしまいます。
また,高薬価の薬剤が簡単に承認されていることも心配です。費用に見合った効果が得られればいいのですが,必ずしも期待に添うような効果が得られていないものもあります。それらの薬剤が費用に見合った効果を発現するようにするためには,効果が期待できる予測因子を明確にして,そのような因子を有する患者さんのみに投与するような仕組みが必要になるのではないでしょうか。すなわち,効果予測因子が明確にならない薬剤に関しては,高薬価としないこととし,効果予測因子の解明を製薬企業に義務づけることも必要と思います。
製薬企業の方々は,そうすれば研究開発費が今以上に高騰化すると言われるかもしれませんが,製薬企業の経営者の年収をみますと,まだまだ余裕があると思われますので,その主張は必ずしも,妥当なものではないと考えられます。
今後も新しい薬剤が開発されてきますが,これまでに経験のない有害反応も多くなりそうです。確立された効果予測因子などで効果がより期待できる患者さんを選択し,これまで以上に有害反応対策を行いながら,患者さんを支えていくという「がん医療」の実現を期待したいと思います。
 
今年も本当にお世話になりました。
来年こそ,いい年にして,復興のあしがかりができることを願っています。

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