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肥満と乳がんの死亡リスクの関連性

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がん医療総論
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 がんの療養生活には適切な運動や栄養摂取が必要であることをかねてからお伝えしてきます。
 忘年会,クリスマス,正月にはたくさんのご馳走を食べることが多くなると思います。
 最近のがんの専門誌に,肥満や糖尿病と生存期間の関係を調べた研究報告が掲載されています。
 乳がん患者を対象とした肥満や糖尿病と生存期間の関係を調べた研究結果を連載でご紹介したいと思います。今回は,肥満と再発パターン,死亡リスクの関連性を調べた報告です。
 食べ過ぎに注意しながら,ご家族の皆さんと美味しい食事を楽しんでいただきたいと思います。


Ewertz M et al. J Clin Oncol 2011:29:25-31

 初期乳がんと診断された53816名の患者さんを対象として,標準体重(BMI)と死亡リスクの関連性を調べたデンマークの研究グループの研究です。患者さんをBMI25kg/m2未満(11490名),25-29kg/m2(5139名),30kg/m2(2338名),不明(34849名)の4つの分類に分け,再発パターン(局所再発,遠隔転移)や死亡リスクとの関連性を検討しています。
 60歳以上,閉経後の患者さんにBMI25-29kg/m2や30kg/m2以上である方が多いことが示されています。

 患者さんを5年未満の観察を行った場合と5-10年の観察を行った場合に分けて,局所再発,遠隔転移,死亡のリスクを検討していますが,5年未満の観察では,明らかな関連性が認められていませんので,5-10年観察した例のみ(死亡リスクに関しては10年以上の観察)の結果を紹介します。

a. 局所再発(BMI25kg/m2未満と比較して)
・BMI25-29kg/m2例 ハザード比1.02,95%信頼区間0.77-1.36,P=0.89
・BMI230kg/m2以上例 ハザード比0.74,95%信頼区間0.46-1.18,P=0.20

 局所再発は,BMI25kg/m2未満の患者さんに比較して,BMI25kg/m2以上の患者さんと有意差は認められません。すなわち,BMIは局所再発に関連が認められないことになります。

b. 遠隔転移(BMI25kg/m2未満と比較して)
・BMI25-29kg/m2例 ハザード比1.42,95%信頼区間1.17-1.73,P<0.001
・BMI230kg/m2以上例 ハザード比1.46,95%信頼区間1.11-1.92,P=0.007

 BMI25kg/m2未満の患者さんに比較して,BMI25kg/m2以上の患者さんでは,遠隔転移のリスクが有意に増加することがわかりました。言い換えますと,BMI25-30kg/m2の患者さんでは42%,BMI30kg/m2の患者さんでは45%,遠隔転移のリスクが増加することが認められました。

c. 乳がんによる死亡リスク(BMI25kg/m2未満と比較して)
・BMI25-29kg/m2例 ハザード比1.26,95%信頼区間1.09-1.46,P=0.002
・BMI230kg/m2以上例 ハザード比1.38,95%信頼区間1.11-1.71,P=0.007
 
 BMI25kg/m2未満の患者さんに比較して,BMI25kg/m2以上の患者さんでは,乳がんによる死亡リスクが有意に増加することがわかりました。言い換えますと,BMI25-30kg/m2の患者さんでは26%,BMI30kg/m2の患者さんでは38%,乳がんによる死亡リスクが増加することが認められました。

d. その他の原因による死亡リスク(BMI25kg/m2未満と比較して)
・BMI25-29kg/m2例 ハザード比0.88,95%信頼区間0.74-1.04,P=0.13
・BMI230kg/m2以上例 ハザード比1.31,95%信頼区間1.08-1.63,P=0.02

 BMI25-29kg/m2例では,BMI25kg/m2の患者さんとその他の原因による死亡リスクには差が認められませんでしたが,BMI30kg/m2以上の患者さんでは,BMI25-29kg/m2例に比較して,有意にその他の原因による死亡リスクが増加し,31%死亡リスクが増加することがわかりました。

e. 治療による影響
 BMI30kg/m2以上で10年以上観察した患者さんで,術後療法との関連性も検討しています。

・化学療法(BMI25kg/m2未満と比較して) ハザード比1.77,95%信頼区間1.37-2.29
・ホルモン療法(BMI25kg/m2未満と比較して) ハザード比1.57,95%信頼区間1.09-2.26
・全体(BMI25kg/m2未満と比較して) ハザード比1.33,95%信頼区間1.14-1.56

 化学療法,ホルモン療法を受けた方でも,BMI30kg/m2以上の患者さんの全死亡リスクは高いことがわかりました。

結論
 著者らは,肥満は乳がんの遠隔転移を促進しや死亡のリスクを高める重要な要因であり,肥満があれば,化学療法やホルモン療法の効果を損ねる可能性があると結論しています。

<コメント>
 乳がんの再発や死亡に肥満が関連するという研究結果を紹介しました。肥満の方は,糖尿病や糖尿病に関係するインスリン抵抗性を示す方もおられると思います。糖尿病やインスリン抵抗性に関しては,後日研究結果を紹介します。
 がんの増殖を促進する因子として,エストロゲン,インスリン様増殖因子や糖が知られています。肥満の方は皮下脂肪も多いと思いますので,閉経後に卵巣機能が低下していたとしても,脂肪組織からエストロゲンが作り出される可能性もあります。すなわち,がんの増殖を促進していると言えるのかもしれません。
 また,肥満の方は運動をされない方も多いと思いますので,それらがお互いに相乗して,がんの再発を促進している可能性もあります。
 今回の研究で興味があるのは,肥満の方は,化学療法やホルモン療法を行っても効果が弱いということです。言い換えますと,がん治療の効果を上手く発揮させるためには,肥満にならないように適切に食事をして,運動を行うことが良いのかもしれません。
 クリスマス,正月などカロリーが高いものが多くなります。呉々も,食べ過ぎないようにして,クリスマスや正月を楽しんでいただきたいと思います。

<関連情報>
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