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ドラマ「告知せず」をみて感じたこと

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昨夜,テレビ朝日系列で,渡哲也,高畑淳子,滝沢秀明らが出演するドラマ「告知せず」をみました。普段は,このようなドラマは,身につまされるために見ることがないのですが,昨夜は他に観たい番組がなかったために観ることになりました。「告知」する医師・家族の心理的な葛藤が描かれ,また,医師として,家族として,患者さんにどのように接するべきかを考えさせられました。


 渡哲也が扮する呼吸器外科医の愛する妻(高畑淳子)が救急車で運ばれ手術した際に,転移が認められるがん(部位は不明でしたが)が見つかり,手術を担当した他の医師が告知を勧めるのですが,ご主人でもある呼吸器外科の医師は,告知すべきかどうか迷いながら,研修医である息子(滝沢秀明)にも母の病気を伝えていませんでした。
 ご主人でもある呼吸器外科医の心の葛藤を描きながらドラマは進行し,元気なうちにと息子とのグアム旅行を勧め,たのですが,グアムで状態が悪化し,その病院の医師が,息子に母親の病名を告げてしまい,息子に叱責を受けてしまいます。それで,親子で病名を告げようとするのですが,患者さんである妻から,それを遮られ「元気になるから頑張れと励まして欲しい」とは言われてしまい,伝えることをしませんでした。
 外科医としては病名を伝えなければならない,しかし,明るい妻の悲しむ顔を見ることができないと考えて伝えられない家族としての心情がわかりましたし,病名が伝えられなくても,病気のことを気づいていながら明るく振る舞う妻(母親)の気持ちがよく描かれていましたし,最後のシーンで,家庭のことはなにもわからないご主人のために,そっとメモを残し,それを読むご主人の姿が印象的でした。
http://www.tv-asahi.co.jp/kokuchisezu/

このドラマを見て,考えされられた点をいくつか紹介します。

1. 告知するかどうか
 執刀医の医師は,今後の人生のために今後の治療のためにも告知することを強く勧めていました。手術した時点の状態はわかりませんが,他の治療で状態が改善し,生存期間などが延長する可能性が高ければ,告知しなければならないのでしょう。
 今回のドラマでは,そのことに触れていませんでしたので,何とも言えませんが,その可能性は低かったのでしょう。でも,術後元気(全身状態良好)で,カステラなどを食べているシーンがありましたので,他の治療も可能だったのかも知れません。
 ドラマですので仕方がないのですが,僕だったらどうするかを考えてみました。
 
僕だったら,病名を伝えて,最後まで一緒にがんと闘おうと言うのではと思いました。ドラマの主人公も,教授選を辞退してまで,妻に最後まで寄り添うことを決意していたと思いますが,がんという病気にともに闘うということをしていなかった印象です。
 奥さんが,「元気になるから頑張れと励まして欲しい」という気持ちもあり,「いつまでも生きたい」という希望があったのですから,手術直後に病名を伝え,ともに闘うという姿勢を示すことも大切と思っています。グアムで倒れたときは,遅すぎるように思います。

2. 別な患者さんの取り組み方
 主人公の外科医の患者さんで,手術が出来ない方に説明するシーンがありました。その際,その患者さんは,「死ぬのを待っているだけなのか」と叫んだ際に,高島礼子扮するその奥様が「人間はいつか必ず死ぬ。早いか遅いかだ。しかし,最後まで一生懸命に生きることが大切。私はあなたと最後まで一緒にこの病気と闘う」というシーンも印象的でした。
 僕は,患者会や患者の方には,「現在の科学レベルでは治癒が期待できませんが,与えられた人生を全うできるかもしれません」とお伝えしています。有効性が証明されている科学的な根拠が可能性があれば,適切な抗がん治療を勧めると思いますし,抗がん治療が却って状態を悪化させる場合には,抗がん治療を行わず,痛みなどの症状を和らげる治療を勧めると思います。すなわち,最後の最後まで,患者さんに生きる希望(過剰な期待ではなく)を持っていただき,その方の人生を支えられるような治療を提案することになると思います。
 その方がその方らしく,人生を全うするためにサポートすることが必要であることを改めて感じましたシーンでした。

3. 医療専門職として姿勢
 今回のドラマで最も言いたかったことと思いますが,告知しようがしまいが,最後まで患者さんに寄り添うことが医療専門職として,家族として,必要であることを痛感しました。
 患者さんに本当のことをお伝えし,その中で患者さんが選択しやすいような状況を作り出すようなサポートを行うことも重要で,治療開始してからも,副作用の出現,QOLの変化を確かめながら,患者さんをサポートすることも重要と思います。科学には限界がありますし,私たちの知識・スキルには限界もあります。ですが,最後まで患者さんに寄り添いながらサポートして,人生を全うしていただくことが必要であることを改めて認識しました。

ドラマですので,状況設定が違うな~と思うところがありましたし,皆さんと感じ方は違うかも知れませんが,僕としては,患者さんやご家族の心の葛藤,そして家族として,医療専門職としての取り組み方を考える意味で有意義な時間となりました。
 皆さんはどう感じられましたでしょうか。

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