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がんによる痛みの治療の話題part1

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緩和ケア
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 がんに伴う痛みを緩和することはがんの療養生活をよりよくするためには重要ですが,ドラマなどでがんの痛みの治療法について正しいと思われない台詞があることが話題になっています。がんによる痛みの治療に関する話題を2~3回に分けて紹介したいと思います。


ドラマ「風のガーデン」の台詞から

肝臓がんのため亡くなった緒方拳氏の遺作と話題になっているフジテレビの「風のガーデン」の中で,がんの痛み治療のシーンで,中井貴一氏が扮する麻酔科医が,膵臓がん患者にがん疼痛治療を行う際に,貼付剤を使用し,1回貼ると2~3日効果があると説明していたことが話題になっています。
 更に,別の日には,「麻薬が要るなら私にいってよ!規則に反しても,法を犯してもあなたのためならなんだってする…」という台詞があったことも問題にされていました。
http://wwwz.fujitv.co.jp/garden/index.html

がんによる痛みがあれば,まずがんの痛みの強さやどのような痛みなのか,いつから痛いのか,どんなことをしたら痛くなるのか,どのようなことで痛みは和らぐかを患者さんに伺い,痛みの状況を把握することからはじめます。これを痛みのアセスメントと言います。
 痛みの状況がわかれば,痛みに応じて,鎮痛薬を投与することになります。具体的には,アセトアミノフェンやNSAIDsから投与を初め,それでも痛みが改善しなければコデイン(低用量のモルヒネも可),オキシコドンなどを投与します。それでも効果が認められないときに,強力なオピオイドと呼ばれるモルヒネ,オキシコドンを投与します。この方法をWHO(世界保健機関)の三段階除痛治療法といいます。
 オピオイドは過剰投与になりますと,呼吸ができなくなる呼吸機能が低下したり,人が変わったような行動・言動をとる精神症状が出現する可能性があります。このように,痛みがとれても,よりよい療養生活を送ることができなくなったり,最悪な場合には,呼吸が止まるという事態を招くことが知られてますので,患者さんの痛みが改善し,副作用が問題にならない適切な量を決めるタイトレーションを行います。便秘は痛みが改善する前に,必ず出ますので,便秘対策は適切な投与量を決める際にも必要になります。

適切な量が決まったら,1日1~2回の投与で済む徐放製剤に変更することが一般的に行なわれます。適切な投与量ですが,突然出現する痛みがありますので,そのような痛みに対処するために,痛いときに,定められた投与量を服用する臨時追加投与レスキュー投与)を行なうことを考え,患者さんに痛いときに定められた量の薬剤を服用するように説明することが一般的です。
 
ある程度投与が行われ,腎臓機能が悪化したり,痛みが改善しなかった場合にフェンタニルパッチという貼付剤に変更することがあります。
 
フェンタニルパッチ(商品名デュロテップパッチ)という貼布剤(貼り薬)は優れた鎮痛薬ですが,過剰投与となれば,期呼吸機能が低下し,最悪な結果を招く可能性がありますので,痛みがあるときに最初に使う薬剤ではないと考えられていますし,米国の厚生労働省とも言えるFDAでは,最初からフェンタニルパッチを使用しないことと警告が出されています。
 フェンタニルは3日に1回貼り替える薬剤で,3日間効果を発揮する可能性がある優れた鎮痛薬ですが,貼り始めてすぐに効果を発揮するわけではなく張ってから12時間で効果を発揮します。また,皮膚の温度で吸収が変わり,人によって吸収の程度が違いますので,痛いときにすぐにフェンタニルパッチを貼るのは適切とは言えません。 また,併用薬(一緒に使う薬)によっても副作用が出現する可能性がありますので,他の薬を使用している場合には,併用している薬とフェンタニルの相性を確かめることが必要になります。
 緩和ケア専門医でも,最初からフェンタニルパッチを使う方がおりますので,テレビでの台詞も仕方がないと思うことがありますが,注目されているドラマですので,多くの方々が,がんの痛みの治療法を誤解するなり,多くの患者さんに危険性を与えることになると思われますので,ドラマでは,正しい台詞にして欲しいと思います
 
 また,がん疼痛があれば,モルヒネなどの医療用麻薬は,麻薬取り扱いの許可を持っている医師であれば,誰でも処方できますので,法を犯すことはありません。更に,法を犯しても医療を提供するということは,ほとんどあり得ません。まるで法を犯す医療が,人道的であるという表現は好ましくありませんし,法を犯さなくても,質の高い医療を患者さんに提供することは可能であることを理解していただきたいと思います。
 このドラマは,北海道の大学病院の麻酔科が関わっているようですが,人気ドラマで,緒方拳の遺作で注目されていますので影響力が大きいと思いますので,一般の人にも誤解されないような,適切な台詞にしてもらいたいと思います。

 繰り返しお伝えしますが,がんの痛みの多くは,和らげることが可能です
 痛みがあれば,患者さんから痛みの状況(強さ,性質など)を詳しく伺って(アセスメント),痛みの状況に合わせて,効力の弱い薬剤から投与を開始することが基本です。そして,医療用麻薬というオピオイドを使用する場合には,4時間ごとに服用する速放製剤を少量からはじめ,患者さんに適する投与量を定めます(タイトレーションその後,服用のし易さを考えて,12時~24時間ごと(1日1~2回)に服用するモルヒネやオキシコドンの徐放製剤(持続性製剤ともいいます)に切り替えることがあります。フェンタニルパッチは,モルヒネやオキシコドンをある程度服用してから,腎臓機能が悪い方や痛みが改善しない方に使うのが原則と思います。

最初から,3日毎に貼りかえるフェンタニルパッチを使うのは,がんの痛みの治療の原則に反していることをご理解ください。