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よりよくがん医療を受けるには,歯のかみ合わせも大事かもしれません

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がんの療養生活
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 先日,歯科医の方から,お話を聞く機会がありました。
 寝たきりの高齢者の方や,一人で歩けない高齢者の方を調べると,歯がない,入れ歯があわない方が多く,かみ合わせを共成しながら,適切な入れ歯を作ると,数週間で,手足の筋力が回復し,一人で歩けなかった方が,一人で通院可能になったり,寝たきりであった方が一人で動けるようになるまで回復するという事例をスライドを使って,何例も見せていただきました。
 歯の健康は,しばしば言われますが,適切な入れ歯やかみ合わせ(咬合)を矯正するだけで,日常活動に支障がある方の機能を回復することが普遍的に認められるなら,介護者の負担も軽減しますし,介護施設なども少なくて済むなど,今,問題になっている高齢者の方に対するケアのあり方を大きく変えるものになり,効果的で効率的な高齢者ケアになる可能性が高いと思いました。

 最近,歯の喪失はがんのリスクを高めるという愛知がんセンターの研究結果が報告されています。 
Hiraki A et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2008;17:1222-1227

 この研究は,がんの患者さん5240名と年齢,性別を合わせたがんではない方(対照群)10480名の残された歯の数毎に分け,がんの発生リスクにどのような影響があるかを調べたものです。
 がん患者さんは,対照群の方に比較して,がんのリスクに関連すると知られている喫煙の習慣のある方,緑黄色野菜をあまり食べない方,運動しない方が有意に多く認められたため,それらの影響が出ないように,これらの因子を調整後に,残った歯とがんのリスクとの関連性を調べています。
 その結果,残りの歯が減るに従ってがんのリスクが高くなる傾向が認められ,残りの歯が21本以上の方に比較して,1本もない方では,頭頸部がん(オッズ比1.68,95%信頼区間0.88-1.93,P=0.055),食道がん(オッズ比2.68,95%信頼区間1.17-4.75,P=0.002),肺がん(オッズ比1.54,95%信頼区間1.05-2.27,P=0.027)とがんのリスクが高くなることが認められています。
 食道がんでは残りの歯が21本の方に比較して,9〜20本の方ではがんのリスクが1.03倍,1〜8本の方では1.93倍,1本もない方では2.36倍になることを意味します。
 このように,残りの歯が少なくなると,頭頸部がん,食道がん,肺がんの発生するリスクが高まることが示されましたので,研究者らは,歯を残すことでがんの予防になるのではと考えています。
 この研究結果は,禁煙,緑黄色野菜の摂取,適切な運動に加え,歯の健康を維持することががんの予防になる可能性を指摘していると思います。
 
 先に述べたように,歯がなくなっても,適切なかみ合わせ(咬合)ができる適切な入れ歯があれば,同じような結果が得られる可能性もあります。

 がんのリスクを軽減するような,栄養,運動は,がん治療中,またはがん治療後も非常に大切であることもわかってきていますので,歯の健康を維持することや適切なかみ合わせ(咬合)ができる適切な入れ歯をするということは,がんの療養生活にも重要になるのではないでしょうか。

 抗がん剤投与の時には,白血球減少などの副作用がありますので,感染予防のために虫歯の治療も必要になりますが,歯がなくなってかみ合わせが悪くなると健康を害する可能性もあります。
 今一度,かみ合わせが適切かを調べ,適切でなければ矯正や入れ歯を考えてみてはいかがでしょうか。

 但し,現在,ゾレドロネート(商品名ゾメタ)のようなビスフォスフォネート製剤を投与されている方が,虫歯治療や口腔の手術をすると顎の骨が壊死を起こす危険性がありますので,そのような方は,その旨を歯科医にお伝え下さい。