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イレッサ,タルセバによる皮膚障害の対策

カテゴリ : 
皮膚障害
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 ゲフィチニブ(商品名イレッサ)やエルロチニブ(商品名タルセバ)などの上皮増殖因子受容体(FGFR)に作用する分子標的治療薬の副作用として,ニキビのような皮疹などの皮膚障害が多く認められることも知られています。この種の薬剤の皮膚障害の対策について紹介します

 
 これらの薬剤は,皮膚反応が出現した患者さんに効果を発揮しやすいことが証明されています。しかし,多くの患者さんが痒み,皮疹や膿疱で日常生活に支障を来すことがありますので,効果を減弱することなしに皮膚障害の副作用対策が必要になります。
 これまで,皮膚障害対策を示したものが非常に少なかったのですが,エルロチニブ(商品名タルセバ)を販売する中外製薬(株)のホームページに「タルセバの適正使用ガイド」を公開し,その中に,皮膚障害である皮疹の対策が掲載されています。非常に良くまとまっていると思いますので,一度,アクセスしてご確認下さい。
中外製薬(株) 「タルセバの適正使用ガイド」(皮疹)

  また,米国臨床腫瘍学会(ASCO)の情報サイトCancer.Netの患者向け情報に「分子標的治療薬の皮膚障害」があります。
Cancer.Netの患者向け情報「分子標的治療薬の皮膚障害」

 これらを参考に,ゲフィチニブ(商品名イレッサ)やエルロチニブ(商品名タルセバ)などの皮膚障害対策についてまとめてみました。
 EGFRはがん細胞の増殖を促進しますが,皮膚,髪や爪の正常な増殖にも重要な働きをします。EGFRの作用を阻害する薬剤による治療後に,発疹や髪や爪の変化がみられることがあります。これらの副作用はほとんどの患者で対応可能で,皮膚,髪や爪の異常が見られても,治療は継続可能とされています。これらの皮膚の副作用はアレルギー性または感染性の反応ではありません。
 顔や上半身に出現する皮疹は45〜100%の患者に認められ,通常は,薬剤投与の最初の数週間以内に出現します。これらの皮疹が発現する前に,通常は,日焼けのように顔の発赤やほてるような感覚がみられます。数日後,圧痛のある吹き出物や膿疱が出現し,皮膚の周辺が幾分敏感に感じるようになります。皮疹は,軽度であることが多いようですが,身体的や美容的な不快感をもたらすことがあります。(注:欧米では日本人に比べて軽度な例が多いようですが,日本では,この副作用で辛い思いをされる方が多いようです)

  他の症状としては,次のものが含まれます。
①顔,首,上半身の吹き出物や膿疱
②顔の皮膚が過敏になり,日焼けしたような感覚での吹き出物の痒み
③皮膚の痒み,とくに頭皮・ 鼻のなか,口角や眼の不快な痛み(感覚)
④爪の周りの痛みのある炎症,とくに手の親指
⑤爪がもろくなる
⑥爪床の喪失
⑦頭皮全体にわたる脱毛や四肢の毛の減少
⑧まつげや眉毛の増殖とカール
⑨顔面の毛の増殖
⑩皮膚の変色のしやすさ
⑪乾燥,はがれやすい皮膚
⑫ドライアイ,眼の痒み

 これらの薬物療法の数カ月後に,ある患者では,爪の周りに痛み,発赤,腫脹,指先が亀裂のように紙で切ったような小さな傷を出現することがあります。ある患者では,鱗のようになり,はがれやすくなった重度の乾燥皮膚になることもあります。
 皮疹の出現に加えて,皮膚は非常に敏感になり,痒くなり,日動の活動性や睡眠に悪い影響を与えます。掻きすぎると皮膚が傷害され,より感染しやすくなります。
 発疹,乾燥皮膚,爪や毛髪の反応はまれに重症となりますが,それらの反応は非常に不快なものであり,ある患者では,がん治療の中断を余儀なくされます。

 これらの反応の対策には次のようなものがあります。
①治療を開始する前やこの反応がでたら早いうちに皆さんの担当に相談してください。できれば,このような副作用が詳しい方がよいと思います
②日光を避け,日光の遮蔽度が大きい遮光剤を用いてください。理想的には,SPF値が少なくても30(すなわち通常の日光の1/30に遮蔽する)が望ましく,二酸化チタンや酸化亜鉛を含んだ遮光剤が望ましいと思います。汗をかいたり,泳いだりするときには2時間ごと以上にそれを利用するとよいと思います
③十分な量の遮光剤を使用すること。両腕,顔,首にティースプーン半分くらい以上,胸,腹部,背中や両足にはティースプーン1杯以上をつけてください
④外出するときには,広いつばのある帽子を着用してください
⑤シャワーではマイルドな石鹸を使用し,強い臭いがある石鹸を避けてください。また,強い香料の洗濯石鹸も避けてください。生温い温水でシャワーを行い,長い,熱いシャワーは避けてください
⑥シャワーまたは入浴の15分以内にモイスチャークリームを使ってください。使用されるときには,医師や看護師に相談してください
⑦この反応の最初の徴候(暖かいまたは焼けるような感覚,吹き出物,爪が割れる,皮膚の乾燥)が出現したときには,これらの反応をよく知っている担当医や皮膚科医にそのことをお伝えください
⑧アルコールは皮膚を乾燥させますので,アルコールを含む皮膚用製品は避けてください
⑨ドキシサイクリン(商品名ビブラマイシン)やミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質の経口投与は発疹や爪の痛みなどの過敏症には有効な治療です。通常,2〜4週間投与されます
⑩クリンダマイシン(商品ダラシンTゲル)も軽症の場合には有効である可能性があります(アストラゼネカ社の皮膚障害管理の資料によりますとゲンタマイシン軟膏やフシジン酸ナトリウム(商品名フシジンレオ)軟膏でも効果があることが記載されています)
⑪皮膚が非常に乾燥し,はがれやすい状態になるときには,皮膚科医は尿素や乳酸を含んだモイスチャークリームを処方することもあります

 上皮増殖因子受容体(FGFR)に作用する薬剤として,ラパチニブ(商品名タイケルブ),セツキシマブ(商品名アービタックス)などが今後日本でも発売になります。とくにエルロチニブ(商品名タルセバ)はゲフィチニブ(商品名イレッサ)より効果も強く,皮膚障害も強いことが知られています。
 日本の臨床医や皮膚科医の中には,この皮膚障害を知らない方もおりますので,皮膚障害が出現した場合には,この文章や中外製薬(株)のホームページから必要と思われるところをプリントして,担当の医師や皮膚科医に見せて注意を喚起することも必要ですし,中外製薬(株)がまとめた医師に配布している皮膚障害対策の小冊子も非常に参考になると思いますので,主治医からその小冊子をもらって,皮膚科医にみせるとよいと思います。  エルロチニブ(商品名タルセバ)やゲフィチニブ(商品名イレッサ)は皮疹などの皮膚障害が認められる方に生存期間が良好であることが示されていますので,皮膚障害がある場合には,適切な対策をして,より快適な療養生活を送っていただきたいと思っています。