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末梢神経障害対策

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末梢神経障害
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 末梢神経障害は,脳や脊髄以外の私たちの身体の神経(末梢神経といいます)が障害を受けたときにみられる症状です。


 私たちの身体の末梢神経には,運動神経,感覚神経,自律神経の三種類がありますが,これらの神経は,私たちの日常生活に重要な働きをしています。
 運動神経が障害されますと,身体のバランスを上手く保てないため歩行や立っていることも難しくなることがありますし,時に筋力低下をもたらすことがあります。
 感覚神経障害では,チクチクする感覚,しびれ,焼けつくような痛み,振動や温度が感じられない感覚が鈍ることなどもみられます。また,自律神経障害の場合には,排尿障害,便秘や発汗異常などが現れることもあります。
 末梢神経障害は,糖尿病や甲状腺疾患などでも認められますが,抗がん剤投与でも末梢神経障害の副作用が出現したり,末梢神経障害を悪化させることが知られています。
 がん患者の10〜20%が末梢神経障害の症状があるとの報告もありますし,最近,開発された新薬の中にも末梢神経障害の副作用の出現頻度が高い薬剤があります。
 末梢神経障害は,直接,命に関わるような有害反応ではありませんが,日常生活を送るにあたって,支障を来す副作用ですので,その対処方法を知っておくことが望ましいと思います。

<末梢神経障害の症状>
 末梢神経障害の症状や重症度は,どの神経が,またどの程度の神経が障害されたかによって異なりますので,個人個人によってバラツキがあります。
 末梢神経障害は,抗がん剤が神経細胞に蓄積されて出現することが多いため,一般的に治療後数カ月から数年にわたって進行すると考えられていますが,オキサリプラチン(商品名エルプラット)の場合には,投与後比較的早期に出現することがあります。末梢神経障害には,運動神経,感覚神経,自律神経が障害される三種類のタイプがあります。
 感覚神経 末梢神経障害は,手足の神経における触るとか感じるという感覚に影響します。末梢神経障害がみられる多くのがん患者の方は,チクチクする,焼けるような,しびれを感じます。通常は,足先や指から始まって,手や足にその異常な感覚が進んで行くことがあります。
 手袋やストッキングを着けていなくても,手袋やストッキングを着けているような感覚になることもあります。

 神経の障害は,何かに触れたときに手足に不快な感覚をもたらすこともあります。靴を履く,足になにかを覆うというような通常は痛みの原因とならないことでも痛みの原因となることもあります。「挟まれるような」,「刺すような」,「焼けるような」,「電気ショックを受けたような」と表現される痛みを感じることがあるかもしれません。
 また,熱いものや冷たいものを感じることが難しくなる感覚異常もみられることがあります。熱いものを感じられなくなりますので,火傷をすることもあります。他には,小さな物を掴むことも難しくなることもあります。
 運動神経 運動神経は,脳と筋肉の間の情報伝達に関与していますので,これらの神経が障害された場合には,歩行や動き回ることが難しくなることがあるかもしれません。手足が重くまた弱ったという感覚になり,身体のバランスを保つのが難しくなることもあります。そのため,手足を使うことが難しくなり,歯を磨くという日常のことにも苦労することになるかもしれません。
 加えて,筋肉のけいれんを経験し,手足の筋肉が喪失することもあります。 自律神経自律神経は,血圧,腸の運動や膀胱の機能などの無意識(不随意)の身体の機能を制御しています。自律神経が障害受けると正常な発汗が不可能になったり,下痢や便秘を起こすこともありますし,めまい,立ちくらみ,物を飲み込めない,性機能不全などの異常が出現します。
 これらの症状がみられたら,できるだけ早く担当の医師や看護師に伝えることをお勧めします。

<末梢神経障害の原因となる要因>
 抗がん剤治療を開始する前に,上記の末梢神経障害の症状があるかどうか,また,末梢神経に関連するような状態にあるかどうかを,担当の医師に確かめることは重要と思います。治療中に,末梢神経障害を予防するために,グルタミン,グルタチオンやビタミンE,ビタミンB1やビタミンB12などの薬剤やビタミンを使うことがあるかもしれません。
 ある種のビタミンでは,ビタミンEのサプリメントでは,抗がん剤治療の効果を弱めることも報告されていますので,ビタミンやサプリメントをご自身の判断で服用するのではなく,必ず,担当の医師とそれらの使用について話し合ってから使用してください。

a. 抗がん剤治療・プラチナ製剤:
 シスプラチン(商品名ブリプラチン他)やカルボプラチン(商品名パラプラチン他)は,累積投与量が多くなると末梢神経障害が出現しやすくなることが知られています。オキサリプラチン(商品名エルプラット)は,投与初期にもしびれなどの末梢神経障害が認められます。

b. タキサン製剤
 ドセタキセル(商品名タキソテール)やパクリタキセル(商品名タキソール他)は,微小管に作用して,抗腫瘍効果を発現する薬剤です。神経細胞にも微小管があるため,副作用として末梢神経障害があることが知られています。

c. ビンカアルカロイド製剤
 ビンクリスチン(商品名オンコビン他),ビンブラスチン(商品名エクザール),ビノレルビン(商品名ナベルビン)も微小管に作用する薬剤ですので,末梢神経障害があり,自律神経障害による便秘が認められます。

d. 多発性骨髄腫治療薬
 ボルテゾミブ(商品名ベルケイド)やサリドマイドも末梢神経障害が多い薬剤として知られています。

e. その他の要因
・がんのタイプ:肺がん,乳がん,卵巣がん,前立腺がん,多発性骨髄腫やホジキンリンパ腫などでは,病気自体でも,また治療(上記の抗がん)によっても末梢神経障害を引き起こす可能性があります。

・放射線療法:放射線療法は神経障害を引き起こすことがありますが,症状は数年経ってから出現することがあります。 ・腫瘍部位:腫瘍が神経を圧迫したり,神経内で増殖している場合には,神経障害をもたらします。

・低栄養:嘔吐などのがん治療の副作用は,ビタミン欠乏を引き起こし,末梢神経障害の原因になる場合があります。

・帯状疱疹など:身体の抵抗性が弱くなっているときに,帯状疱疹(ヘルペス感染)がみられることがありますが,帯状疱疹によっても末梢神経障害を引き起こされる可能性があります。 

・手術:肺がんや乳がんの手術後や,四肢の切断後の末梢神経障害が出現する可能性があります(手術は神経を切断することが多いので当然かもしれません)。  

f. 末梢神経障害のがん関連以外の原因
 末梢神経障害の多くは,がんに関連するものではありませんが,末梢神経障害の原因として知られる状態は,がんに罹ってから,末梢神経障害が強く出現する可能性があります。
 末梢神経障害の原因となるものには,糖尿病,アルコール中毒,エイズなどの感染,慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患,甲状腺機能低下症,腎疾患や腎機能不全,鉛中毒や農薬中毒,過剰なストレスがあります。

<末梢神経障害の対応>
 どのように末梢神経障害を治療するかは,末梢神経障害の原因と関連する症状によって決まります。
 多くの方では,時間が経過すると2〜3ヵ月または2〜3年で,回復が認められますが,中には,回復が認められる長期にわたる対応を必要とする方もおります。

・薬物療法:
 薬物療法は,末梢神経障害を回復する可能性は低いと思われます。しかし,痛みを伴う末梢神経障害は,神経障害性疼痛といわれますが,抗うつ薬や抗けいれん薬投与で痛みが改善することがあります。

・栄養摂取:
 ビタミンB(B1やB12),葉酸やオリーブ油など抗酸化作用があるものを多く含む食物を食べることが末梢神経障害の対策に役立つかもしれません。バランスのある食事をして,アルコールを避けることが勧められます。

・理学療法:
 理学療法は,筋肉の強さを維持やバランスを保つためには有効かもしれません。定期的な運動は,痛みを軽減する可能性があります。

・代替療法:マッサージ,鍼灸やリラクゼーションは,痛みなどの神経症状を改善する可能性があります。

<ご自宅での安全性確保のために>
 皆さんの症状に応じて,ご自宅で傷つかないように注意することが必要になります。
 下記に,ご自宅での安全を確保するための工夫を記載しました。

・全ての部屋,玄関,廊下,階段を明るくすること
・階段の両側に手すりを付けること
・つまづきやすいまた滑りやすい,小さな絨毯や他の障害となるものを取り除くこと
・浴室や浴槽の場所に手すりを付け,滑らないマットを敷くこと
・風呂などで火傷をしないように温度計を使用すること
・水や液体がこぼれたときにはすぐに拭き取ること
・壊れていない食器を使用すること
・料理をするときには鍋つかみを,食器洗いの際にはゴム手袋を使用すること
・車を運転する時には,アクセル,ブレーキ,ハンドルが十分に感じることができるかを確認し,足が迅速にアクセルからブレーキに移動できることを確かめること
・必要な場合には,部屋の移動に杖や歩行器を使用すること

 末梢神経障害は,命に関わるような副作用ではありませんが,皆さんの日常生活に影響しますので,末梢神経障害の症状がみられたら担当の医師や看護師に伝え,対応策を相談することをお勧めします。

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