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適切な運動は生存率を改善します

カテゴリ : 
栄養と運動
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 がんの予防だけでなく,がんの療養生活においても適切な運動や栄養が重要であることを何度もお伝えしてきます。
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最近の学術専門誌に,乳がんと診断された後,どの程度のレベルの運動が生存率に影響するかを調べた研究報告が発表されていますので,その成績を簡単に紹介したいと思います。 
Holick CN et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2008; 17:379-386

 1988年から2001年にかけて,再発が認められない4482名の乳がん患者さんの運動状況を調べ,運動量と死亡リスク(生存率が改善する程度)との関連を調べています。
 運動状況は,患者さんが質問票に答えた内容からMET(Metabolic Equivalent)という指標で表しています。この指標は,安静に座ったままテレビなどを観賞しているときを1METで,平地を普通に歩いたり部屋の掃除などをしていると3METとなります。また,今回使用しているMET-hという指標は,この運動を行った時間を掛け合わせたもので,3MET以上の運動を1時間行えば,3MET-hとなります。

 今回,測定した4485人の患者さんのうち,109人が研究開始6年以内に死亡されています。
 
 診断時の年齢,進行程度,居住の状況,診断から運動の評価までの期間,肥満係数(BMI),ホルモン療法,エネルギー摂取量,乳がんの家族歴や治療法など,生存率に影響する因子の計算に影響しないように調節した後,運動量と死亡リスクの関係を調べています。
 その結果,運動量が1週あたり2.8MET-h未満の患者さんに比較して,1週あたり2.8〜7.9MET-h,1週あたり8.0〜20.9MET-h及び1週あたり21MET-h以上の患者さんは,統計学的に有意に死亡リスクが低下することが認められています。
 専門的な指標では,1週あたり2.8〜7.9MET-hの患者さんはハザード比0.65,1週あたり8.0〜20.9MET-hの患者さんはハザード比0.59及び1週あたり21MET-h以上の患者さんではハザード比0.51であることが示されています。ハザード比が0.65であると言うことは,死亡リスクが1週あたり2.8MET-h未満の患者さんに比較して35%減少していることを示しますので,1週あたり8.0〜20.9MET-hの患者さんは死亡リスクが41%減少及び1週あたり21MET-h以上の患者さんでは死亡リスクが49%低下したことを意味します。
 乳がんによる死亡だけを考えると,1週あたり21MET-h以上の患者さんでは死亡リスクが56%低下していることが示されています。
 今回,対象となった乳がん患者さんは4485人で109人死亡していますので,死亡率は2.4%(生存率は97.6%)です。その患者さんが全例1週あたり21MET-h以上の運動をしたとすれば,死亡リスクは49%低下しますので,死亡例は109-109×0.49=56人に減少することになります。すなわち,死亡率は1.2%になります。

 優れた医薬品と知られるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)の術後補助療法を行った例では,生存率の絶対差は2.7%であることが報告されています。
 治療薬ではなく,運動で1.2%生存率が改善するということは,かなりの効果と考えられます。
 がん医療は,適切な運動をすることでよりよい効果が得られる可能性がありますので,適切な運動を心がけていただければ幸いです。